【utit】甘く甘く溶けるまで (ページ16)

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あらき × ナンパページ16

貴女 side

〜♪
今日は、珍しく一人でショッピングに来ていた。いや、不可抗力な一人なんだけども……

仲の良い友達と来るつもりだったが所謂ドタキャンを食らったわけだ。とはいえ、せっかく街まで出てきたので目的のお店には行こうと思いイヤホンからお気に入りの曲を流し喧騒の中を歩く。

ふと、すれ違った人に目を奪われた。綺麗に染められた少し長めの赤髪。男の人らしい体つきと、ダボっとした格好。目が奪われたのは派手な髪だからとか好みの格好だからとかそんな理由じゃない気がした。

彼と目が合った。気がした。すれ違った一瞬で脳内に記憶された姿、香り、そして瞳。忘れられなかった。
しかし、所詮街ですれ違っただけの人、それで終わり＿＿

＿＿＿＿だと思っていた。
後ろに引かれた腕と、鼻腔を擽るつい数十秒前の香水の香り。

『あのっ………』

普通なら、普段なら気持ち悪いし振り解くところだが、出来る訳がないしする気もない。
声のする方向を腕を引かれた方向をできる限りの平然を装って振り返る。

「なんでしょうか？」

『失礼だったら申し訳ないんっすけど、お一人ですか？』

「はい。友人にドタキャンされて、」

あまりにも緊張した震えた声を掛けられたものだから雰囲気を和らげるために苦笑い。

『嫌だったらはっきり言ってもらったほうが嬉しいんすけど、よかったら少し俺とどこか行きませんか？』

ほんと嫌だったらはっきり言ってもらって構わないんで！、そう言いながらも繋がれたままの右腕は言葉とは裏腹に離したくないと訴えているようだった。

先に見惚れたのは私だ。断る理由などなかった。
ナンパだと分かっていても、今日だけの付き合いかもしれないけれど、この後どうなるかは私たち次第だ。

「それなら、ここから少し歩くんですけどスイーツも、ご飯ものも、ドリンクも美味しいカフェがあるんです。今からそこに行こうとしてて、」

そこでも良いですか？と尋ねれば断られると思っていたのか少し拍子抜けした顔をしてから良いですね、ちょうどお腹すいてきたとこだったので。と笑顔を送られる。

側から見れば知り合いにも見えるような会話。でもこれは他より運命的なナンパ。
仲を深めるのはまた別の話＿＿。

fin.