■Android28■ ページ8
.
夕方に行った場所に真っ直ぐに向かうと…
微かに聞こえた
小さくて寂しい
アイツの声
真っ暗な公園の街灯に照らされて、ふわふわの体が見えた
「お前、いたの？」
「ｸｩﾝ…」
オレの指をなめて、ほっぺたを擦り付けてくる
「くすぐったいってえ」
抱っこすると、さっきより寂しい目で見てる気がした
「怖かった？
ひとりぼっちだもんね」
そして、気づいたんだ
コイツの足が、何だかオカシイこと
「あれ？」
２つの足
１つだけ、ぷらんとしてて…
地面に降ろすと、引きずって歩いてた
「いたい？」
優しくなでて、もう一度抱き上げた
「大丈夫？」
痛くないように、優しく力を込める
「お前さ…なんか悪い事したの？」
「だから、捨てられちゃったの？」
「足…前からこんななの？」
聞いてみたけど
何にも応えてくれない
『ｸｩﾝ』って、寂しい声を出すだけで…
.
「ホントだ」
Aがさっき言ってたことを思い出す
「雨…、降ってきたねぇ」
白いふわふわに、ぽつんと雨の粒が落ちた
コイツが濡れないように、
シャツを捲って、隠そうとしたのに……
コイツは大人しく、シャツの中に入ってくれない
「ダメだって！いうこと聞いてよ」
だけどね
気づいた
空は真っ暗だけど
風は吹いてないし
オレは、濡れてない
雨なんか降ってない
コイツが濡れたのは、オレのせい
「みんなと違うから…？」
「だから？」
「言うこと聞かないと、オレも捨てられちゃうのかな」
毎日１人、部屋の中で
青い空をただ眺めてた
今日の予定も
明日の予定も
何にもない
「お前、シッポ振って、
ふわふわで可愛いのにね？
イタズラして困らせちゃったの？」
どうしてかな
コイツを見てると、ギュッと苦しくなった
オレはやっぱり、みんなと違って、"ポンコツ"なのかもしれない
.
「泣いたの…、誰にも内緒だよ？
しょーちゃんとね、いつも笑ってるって約束してんの」
「ｸｩﾝ…」
「お前、あったかいね」
.
ひとりは寂しい
だから、
暗い夜の間だけでも、
一緒にいよう
.
ラッキーアイテム
革ベルト
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