【アナタシア】キスの意味【短編集】

→* ページ13

まさとside


『まさとくん…』

まさ「めい、ちゃん…？」


ソファーに腰掛けている俺に跨り、見下ろすように俺を見ている彼女

その目はどこかとろんとしてて、妖艶で…

ちょっと待て

えっと、これは…とんでもない展開になっているのでは？

帰ってきてシャワー浴びてソファーに座ってただけなんやけど…

いや、とりあえず落ち着け

このままでいられたらそのままベッドに直行させてしまうなんて可能性も無きにしもあらずだ

それは避けたい

だって、せっかくならシラフの彼女としたいやん…？


『私ってそんなに、みりょくがないかなぁ…？』


酔っ払っておっとりとした口調になっているせいか発する言葉がひらがなで変換されてしまう

かわいい…じゃなくて！


まさ「そんなことないよ。めいちゃんは素敵だよ」

『じゃあなんで抱いてくれないの』

まさ「それは、えっと…」


自分がただ恥ずかしいからだなんて言えるはずがない

俺が言葉を詰まらせたのを“やっぱり自分に魅力がない”と勘違いしてしまったのか、「そうなんじゃん…」と呟いた

否定しようと思うけど上手く言葉が出ない

自分の情けなさに心底呆れるわ…


『じゃあいいもん』

まさ「へ…」

『私がゆーわく、すればいいだけ』


そう言い、俺の耳元で吐息を多く含んだ声で呟いた


『まさとくん、すき』


まさ「ちょ、めいちゃん…！」


耳にちゅっとキスをされ、身体の力が抜けかける

リップ音が直接頭に響いてくらくらする

このままじゃ…あかん！


まさ「めいちゃん！！」

『ん、あ…』


出せる声を出し切って彼女の名前を呼ぶと、泣きそうな顔に変わった

大きな瞳に溜まった涙は遂に目から零れた


大切にしたい、そう思ってたのに


なんでこんなにも上手くいかんのやろ


『ごめん、私…ごめん…』


ただただ謝る彼女をぎゅっと抱き締める

耳元で涙を啜る音としゃくりをあげる声が聞こえた


まさ「俺もごめん。不安にさせて…」

『まさとくんは謝らなくても、』

まさ「俺が、意気地ないからいけんのやから。お互い様。ね？」

『…うん』


ぽつりと1つ返事をすると泣きつかれたのか、彼女の寝息が聞こえてきた

そんな彼女を起こさないように抱きかかえてベッドへ運ぶ

不安にさせてごめんね、めいちゃん

明日、めいちゃんが起きたらすぐに抱きしめよう

おはよう、好きだよって言おう

おはようのキスも…できたらしよう

そう心に決めて彼女の隣で目を閉じた



耳へのキス【誘惑】

執着→←→*

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す