ねじれの位置が438つ ページ8
私は足を止める。それに合わせて陽斗も足を止めた。後ろから聞こえていた声も動きも止まった気配がする。
「こっからは、自分で歩く」
連れて来られた、だと駄目な気がするから。私は自分の足で歩いて非常階段の扉を開けた。ひょう、と春風がドアを押し戻したけれど陽斗が手伝ってくれてなんとか開く。
────タンタンカンタン
非常階段の鉄製の階段を登ると、赤髪が春風で揺れた。彼も此方に気付いて振り向く。
「小野寺ちゃん……と、前原？どしたの？」
目を丸くして尋ねられた。どうやら彼は共犯では無いらしい。だとしたら、悠馬が言っていた通り本当にお節介だ。
「お前の為にクラス全員が頑張ったんだぞ」
陽斗がそう言うと目を大きく開いてからクシャッと顔を歪めた。
「阿呆じゃないの」
その言葉の裏にどんな気持ちが篭っているか知っている。1年間、彼と一緒に居たのだ。分からない奴はクラスの何処にも居ない。
「じゃ、俺は無事届けたから帰るわ」
陽斗はそう言ってから手を振って非常階段を降りて行く。
「ありがと、最悪だよって皆に言っといて」
「りょーかい」
2人は顔を合わせずにそう言った。それから陽斗は大きな音を立てて扉を閉める。完全に2人きりになってしまった。
強い春風が、私の頬を撫でる。
「ははっ、散々だったね小野寺ちゃん」
他人事の様に笑うカルマを見て私も溜め息を付いた。彼の隣に立って外の景色を見つめる。決して高くは無い位置に居たけど、目の前には畑ばかりで見晴らしも良い。
「どうだった？1年間」
カルマは此方を見ずにそう言った。私はんー、と間延びした声を出す。彼がこんな事を聞くなんて珍しい。卒業式だから、大切な恩師が亡くなったから感傷に浸っているのだろうか。
「楽しかったよ、ずっと」
沢山笑った、沢山泣いた、沢山悩んだ。
感情を放棄して、人との関係性を全てシャットアウトした私に手を伸べてくれたE組の皆が凄く嬉しかった。凄く、楽しかった。
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詩季(プロフ) - 錫さん» サイドストーリーでも彼は結構前原君と踏んだり蹴ったりなので、自分でも引いてしまうくらいに……。何はともあれ、最後まで読んで頂きありがとうございました。アフターストーリーも良ければ見て下さい！！ (2020年4月13日 20時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
詩季(プロフ) - 錫さん» 感想ありがとうございます。今回カルマ君は踏んだり蹴ったりな役回りでしたが、小野寺ちゃんを磯貝君とは違う視点で支えてくれた人物だと勝手に解釈しております。そんな彼を今作でも愛して下さって嬉しいです。イメージ違いなんじゃないかと少し焦っておりました。 (2020年4月13日 20時) (レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
錫(プロフ) - 一先ず、完結おめでとうございます。素晴らしいものをありがとうございました！ 長くなってしまい申し訳ありません。 (2020年4月13日 19時) (レス) id: 678ec532f6 (このIDを非表示/違反報告)
錫(プロフ) - お疲れ様でした！ 赤羽業 のタグに導かれて拝読しておりました私ですが、最後まで詩季さんの描くカルマくんを大好きで、かつ彼女と彼とが恋をするわけでない御作も大好きでいられたことに感無量です。 (2020年4月13日 19時) (レス) id: 678ec532f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2020年4月12日 18時
