ねじれの位置が263つ ページ25
「最後は小野寺さんですか」
「大変不服なんですけどね」
まぁまぁ、なんて笑った殺せんせーは私に目の前の席に座るよう促した。黙って座ってから真っ白な進路希望用紙を提出する。
「何となく、小野寺さんは書けないだろうとは思ってましたよ」
「……え？」
それを見て怒りもせず、馬鹿にもしない先生は静かにそう言った。私が避けている間も、忌み嫌っている間も、この先生は私の事をずっと見ていた。だからこそそう予想したのかもしれない。
「翼さん…今の保護者は、好きな所に行って良いって言ってくれました」
「えぇ」
「でも選択肢が多過ぎて」
えぇ、殺せんせーは再度そう言った。
それからは沈黙が続く。学校の先生は個人の進路までは教えてくれない。だから私がどれだけ悩んでいても他人事なのだ。結局、自分自身で決めるしか方法は無い。
「小野寺さんはこのE組に来てから何か楽しかった事はありますか？」
突然聞かれた質問に楽しかった事を思い出す。E組に来てからは毎日が楽しかったけれど特に楽しかったのは何だろうか。
「皆でリゾート行ったのとか…体育祭の棒倒しで勝った時とか、後少しだけ泳げる様になった時も……それと、お菓子喜んで貰えた時」
「お菓子？」
そうだ、殺せんせーはあの時居なかったのか。
「中間テストの時、松方さんの代わりに託児所に行ったでしょ？その時に皆にお菓子作ったんだよ」
あの時は鬱陶しいって思ってたけど笑顔でお代わりって言われるのも、次のお菓子は何を作るか考えるのも楽しかった。
「そういう風に、今まで楽しかった事を考えながら進路は選ぶべきです。小野寺さんの学力なら特に困る事は無いでしょう。ゆっくり考えて下さい」
保護者の方との相談も忘れずに、なんていうお節介を聞いてから頷く。未来の事ばかりでは無く、過去の事からもヒントを得られるのか。
「それと、あまり自分を追い詰め過ぎ無い様にね」
殺せんせーは真っ白の進路希望用紙を置いてからそう言った。顔を上げると優しい顔をした彼が頭に触手を置く。
「故人は何をしたって帰って来ません。
だけど大丈夫、誰も貴方の事を恨んでませんよ」
「……はい」
何度も聞かされた言葉。何度も飲み込んで来た言葉。何度も吐き出して来た言葉。頭では分かっているのにどうして心は追い付かないのだろうか。
度々見る悪夢も、度々見る彼女の黒い顔も、度々聞こえる恨み言も、全てが偽物な事を証明出来る程天才では無い。
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詩季(プロフ) - レイカさん» ありがとうございます〜！普段は誤字の訂正にレスはしないのですが、これはちょっと面白かったのでレスしてしまいました。浅野君…学年最下位にっ…！笑笑 (2020年3月20日 22時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
レイカ(プロフ) - 浅野くんの点数が197点になってます！ (2020年3月20日 20時) (レス) id: 2f295bf970 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 中間、誤字ってます (2020年3月18日 19時) (レス) id: 83190f504a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2020年3月14日 19時
