ねじれの位置が151つ ページ9
波の音が跳ね返って耳の中で揺蕩う。隣に座る悠馬は暗い顔をしていた。かく言う私も明るい顔はしていない。
「そっか…うん」
悠馬が無理矢理出した言葉はそれだった。私も頷いてから答える。
「楽しい時は、何処かで菜摘がこっちを睨んでる気がするんだ」
それが幻覚なのは分かってる。最近は意識しないと見えなくなった。でも、確実に其処に居る。
「あのさ、気になったんだけど」
悠馬は此方に顔を向けず言葉を漏らした。なに、と小さな声で問い掛けると悠馬は珍しく口篭る。
「いや…うん、それって''白の誘拐部屋''の事だよな？」
「……え？」
話を聞く所に寄ると、2年前の秋に大々的に報道されたニュースらしい。
男2人組は実験だと言って様々な年代の子供を集めて2人で白い部屋に閉じ込める。其処から2人の結束力と、何を自白するのかを調べたかったらしい。
当時の死亡者は1人、名前は出なかったけれど同い年の女の子だった。
「おばさん達の件は分かんないけど、Aが菜摘ちゃんに恨まれる理由は無いよ」
笑いもせず、同情もせず、悠馬の唇はそんな言葉をなぞった。私は何も答えない。
「それに、俺はAに幸せになって欲しい」
やっと此方を向いた悠馬とても寂しそうに笑っていた。瞳に涙が溜まる。
「今までAが生きて来たのは、おじさんやおばさん、菜摘ちゃん、それに翼さんとか色んな人が生きてて欲しいって命を吹き込んだからなんだよ。
だから、此処で何もかも捨てるなんて勿体無いと思うな」
気付けば涙が溢れていた。幾ら擦っても止まらなくて胸が苦しい。
擦るなよ、なんて言いながら悠馬は抱き締めてくれた。それが温かくて、安心した。その温度の名前はまだ分からないけどずっと此処に居たいと思った。
「うっ…あ、あ……うわぁあああああ」
悠馬の後ろで黒い顔をした菜摘が良かったね、なんて言いながら笑っている様な気がした。
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詩季(プロフ) - 閃光の舞姫さん» コメントありがとうございます！！1から読んでいただけているなんて凄く嬉しいです、これからも頑張ります！！ (2020年3月8日 14時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
閃光の舞姫 - １から全部読んできました！すごく面白いです！更新、頑張ってください！ (2020年3月7日 21時) (レス) id: d6107e9d06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2020年3月5日 17時
