ねじれの位置が167つ ページ25
夏の夏期講習、基いクラス全員でのオキナワ旅行を終えて家に帰る。キャリーをエレベーターの中に突っ込んで特定のフロアのボタンを押す。ポーンという鈍い音と共に開いた扉を潜り抜けて自分が住む家に着いた。
手前にある自室に荷物を置き、それから手を洗う。最後にリビングの扉を開いた。
「ただいま帰りました」
「おかえりA、旅行は楽しかった？」
「はい、行かせて頂きありがとうございます」
保護者である翼さんとある程度の言葉を交わしたから部屋に戻ろうと踵を返す。
「ねぇA、この後予定ある？」
ソファで寛いでいた翼さんが此方を見て私を呼び止めたから首を振って予定が無い事を示す。
「疲れてる所悪いんだけど、ちょっと話せないかな？」
「はい、大丈夫ですよ」
私はソファの方に歩いて行く。座って、と手で指示をされた為隣に腰掛けた。
「今日担任の先生から連絡が来てね」
「えっ…」
担任の先生って、あの黄色いタコから電話なんてそんな事あるのだろうか。いや、しかし声だけならばギリギリ良いのだろうか。
「夏休みに三者面談あるんだってね」
連絡を寄越したのはきっと烏間先生だ。気まずくて小さく頷く。
「公演中にも休演日があるし、先生と相談してオフの日に面談を入れて貰う事だって出来るんだよ？だからちゃんと話してよ」
「……すみません」
迷惑を掛けたく無い。その一心でなんとか会話を早く終わらせようとした。ぎゅっと心が締め付けられて両膝に付いている拳を握った。
「もう良いよ、俺もごめんね」
すみません、最後にもう1度謝罪をして席を立つ。戻った先は勿論自分の箱庭だ。扉を閉めて蹲る。結局私はこの家に住ませて貰っている立場で、彼は私の保護者以外の何者でも無い。だから彼の生活の邪魔はしたくない。それだけなのにどうしてこんなに心が苦しいのだろうか。
徐ろに立ち上がって机に置いてあるスマホを手に取る。電話欄を見てスライドを止めたのはよく見る名前。5秒位躊躇ってからタップをする。数回のコールを挟んでから声が聞こえた。
「…どうした？」
「うん、さっきぶり」
優しい声で尋ねてくれる悠馬に安心してつい柔らかい声を出してしまう。
「ちょっと苦しくなっただけ」
「そっか…大丈夫、何とかなるよ」
「……何それ」
何も知らない癖に、なんて笑ってみせた。そうしたら悠馬も笑ったから少しだけ心にゆとりが出来る。
「あのね、」
そんな言葉と共に私達の秘密の話が始まった。
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詩季(プロフ) - 閃光の舞姫さん» コメントありがとうございます！！1から読んでいただけているなんて凄く嬉しいです、これからも頑張ります！！ (2020年3月8日 14時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
閃光の舞姫 - １から全部読んできました！すごく面白いです！更新、頑張ってください！ (2020年3月7日 21時) (レス) id: d6107e9d06 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2020年3月5日 17時
