平行線が185つ ページ43
『あぁ、カルマ……』
意外にも知ってそうな声で反応される。その日の夜にカルマの様子が可笑しいという話を悠馬にしてみると呆れの入った声を漏らされた。
「何か知ってるの？」
『いや何も』
即否定される。嘘は付いていないらしい。私は電話という聴覚しか使えない空間で首を傾けた。
『俺もこの前会ったけど、確かにちょっと変だった』
「え、悠馬ってカルマと仲良いの？」
そう尋ねると彼はあはは、と愛想笑いを繰り出す。
「仲悪いと思ってた。お互い嫌ってそうじゃん」
『好きなタイプでは無いな』
最近ははっきりと物を言うようになった悠馬はそう言う。だよね、と心の中で返した。
『前原と3人でたまに会うんだよ』
「……へぇ」
それは意外。
『その時もなんか元気無かったというか……まぁカルマだから何も言わなかったんだけど』
悠馬はそう言ったっきり黙ってしまった。カルマだから何も言わない。という言葉はE組の中では納得出来てしまう物だった。だからこそ、メグは心配するのだろう。
『俺はてっきりAと何かあったんだと思ったけど』
薄らと明るい調子で彼は言った。もし私と何かあったのだとしたらきっと彼はもっと前に気付くだろう。私の様子が変だったら1番に声を掛けてくれるのだ。
「渚は知ってるのかな」
『渚？なんで』
電話越しにくぐもって聞こえる声に私も応える。
「だってカルマが相談するって言ったら渚でしょ、1番仲良いし」
『あーなるほど』
春頃、カルマが音信不通だった時期も渚とは会っていたらしい。この前も渚の家に行っていた。それほど仲良い筈だ。
『でもカルマは、仲が良いからって話すタイプでも無いだろ』
「確かに」
悠馬の言葉に肯定する。結局最近囁かれているカルマの様子が可笑しい、というのは誰も答えを知らないらしい。
『というか、カルマが話さないなら聞く必要あるか？』
「それは私も思った」
『思った……？』
カルマが話したくないのなら話す必要は無い。特に心の柔らかい部分に触れられて欲しくないし、触れない彼の事だから誰もその傷には触れない。
「でも、誰かに助けてって言えないのは辛いんだよ」
私も悠馬も、この苦しさを知っている。息も引き攣って、上手く出来なくて、だから助けてとは言えない。それは傍から見ればすかしている様に見えてしまう。メグはこの苦しさをカルマに背負わせたくないのだ、きっと。
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詩季(プロフ) - ハニさん» コメントありがとうございます、最近は時間が無く、長期休みにしか投稿出来ませんがまた読んでいただけたら幸いです。 (2022年3月6日 13時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
ハニ(プロフ) - ねじれの位置から一気にここまで読み進めてしまいました…！この作品、大好きです！更新頑張ってください！ (2021年9月7日 18時) (レス) id: dd382f78df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2021年9月2日 19時
