平行線が170つ ページ28
珍しいお迎えに肩を竦めて答える。
「出ないけど」
「出なさいよ、そんなんだから高嶺の花って言われんのよ」
「別に気にしてない」
「はーやーく、きーがーえーる」
「……はぁい」
私はクラスTシャツが入っている方の鞄を持ってトイレへ向かった。結局石島の問い掛けには答えられなかったから、彼が何を言いたかったのかは分からないままである。
言われた通り、急いで着替えた後に教室に戻ると石島はもう居なかった。メグに言われるがままに手を引かれてグラウンドまで行く。其処には紫音や高野、志倉のいつものメンバーが居た。
「遅いよ〜」
「出る気無かったから」
「ミスコンの結果出るんだぞ？」
「興味無い」
石島が居ない。目線だけ動かすと、彼は見た事も無い生徒と居た。部活の友人だろうか。
後夜祭用に作られたステージには司会の男子が二人立っていて、次のプログラムに行くまでの時間繋ぎをしている。どうやらミスコン、ミスタコンの発表をするらしい。どの高校も、この場面が1番盛り上がるだろう。
だが私達が選出された生徒達を知っている訳でも無い為、BGMとなってしまう。
「姫香にも声掛けたんだけどね」
メグはポツリとそんな事を呟いた。私は黙ったまま、何もアクションを起こせずにいる。
あの1件以来、クラスで彼女の名前を聞く事が無くなってしまった。つい最近まで可愛いと持て囃されていたというのに、世界は辛辣だ。
「小野寺は出なかったのか？」
「Aは無理よ、喋らせない方が良い」
「メグが出たら違う意味での優勝になっちゃうもんね、お互い出なくて良かった」
世界は辛辣だ。
高野の声掛けに答えたメグに対抗する様に口を挟む。高野は苦笑いの音を立てて、ミスコンとミスタコンの優勝者が並んでいるステージを眺めた。
「お、可愛い」
「高野ってそういう所しか見てないよね。顔で人を分別するの？」
「高嶺の花は言う事が怖いなぁ」
それからゆっくりと息を履いた。
「顔は大事だろ、人間が1番最初に認識するのは顔だ」
分かる様な、分からない様な、不思議な解答だった。私が首を傾げると肩を竦めて話を打ち切る。隣に居る志倉も何故か笑っていた。
文化祭の終わり、空の蒼も傾いて来て紅に侵食されていく。スピーカーを通じて溢れる声や、地べたから湧いてくる歓声は違う世界の音に気がした。
────────
時間が空いたので投稿します。
次は冬休みに会いましょう。
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詩季(プロフ) - ハニさん» コメントありがとうございます、最近は時間が無く、長期休みにしか投稿出来ませんがまた読んでいただけたら幸いです。 (2022年3月6日 13時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
ハニ(プロフ) - ねじれの位置から一気にここまで読み進めてしまいました…！この作品、大好きです！更新頑張ってください！ (2021年9月7日 18時) (レス) id: dd382f78df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2021年9月2日 19時
