平行線が157つ ページ15
30分程歩き回って教室に帰ると、席は案の定満席だった。文化祭では珍しくも無い光景である。
「おかえり」
「ん、大変そうだね」
クラスTシャツを着た紫音がサーブの間に挨拶をしてくれる。ギャルソンを着たメグも、もう1つのメイド服を着ている姫香も至る所で写真を頼まれて大変そうだ。
「私逃げて良い？」
「駄目だよ」
その写真大会に私も引き摺り込まれた。出来る限りの笑顔を出して、メイドらしいポーズを取る。知らない人と撮ると言う習慣が無さ過ぎてすごく緊張した。
「お姉さん、俺にも1枚良い？」
「うわっ、また来たの？」
写真の列に並んでいた顔見知り、岡島はカメラを構えた反対の手を使ってスマホを操作する。
「前原が」
E組のグループに送られたメッセージに送られた写真を拳を作る。彼が勝手に送っていたのは私が下で看板を持ちながら歩いていた所だ。いつの間に撮られたのだろうか。
「さいっあく」
一言そう呟くと彼は苦笑いをした。否、これは喜んでいる顔だ。
「ほら、ちゃんとメイドらしくサービスしろよ」
「岡島にやるサービスって何、無視とか？」
そう言いながらも、私も早く休憩に入りたいので両手でスカートを摘んで片足を後ろに下げる。彼はパシャパシャと音を立てながら一眼レフに写真を納めていった。
「磯貝には内緒にしとけよ、怒られたくないから」
「分かった。必ず伝える」
私は最後に彼の背中を押した。1人で乗り込んでくるという事は余程急いで来たのだろう。怒りで振り返った彼にちゃんと手を振って返した。
「何、あの変態オーラが醸し出てる奴」
交代に来た高野が去っていく岡島を見て尋ねてくる。確かに、他の連中からすると岡島はインパクトが強いかもしれない。去年はキャラとして定着していたけれど。
「只の変態だよ」
イトナが主犯となって盗撮カメラを作っていたのを思い出した。男子全員の犯行と中村が言っていたのも懐かしい。高野はへぇ、といまいち理解出来ないらしく変な声を漏らした。
「私もシフト抜ける。他のメイドさんに写真撮って貰って」
午前中の間にこんなに働いたのだ、午後は文化祭を楽しみたい。メイド服のまま教室を出て、人混みをなんとか掻き分けて階段の踊り場の壁に背中を付けた。立ち入り禁止の屋上につながるこの階段の近くは幾分か人がいなくて助かる。
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詩季(プロフ) - ハニさん» コメントありがとうございます、最近は時間が無く、長期休みにしか投稿出来ませんがまた読んでいただけたら幸いです。 (2022年3月6日 13時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
ハニ(プロフ) - ねじれの位置から一気にここまで読み進めてしまいました…！この作品、大好きです！更新頑張ってください！ (2021年9月7日 18時) (レス) id: dd382f78df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2021年9月2日 19時
