平行線が130つ ページ36
彼女はガリっと、此方に聞こえる暗い大きな音で歯を食い縛った。彼女もお菓子を作るのが好きでこの部活にはいたのだ。だからコンクールに出たかったのだろう。だが結果もキマていないこの状態で私に嫌味を言われても困る。私自身も出場出来るか分かっていないというのに。
「普段からお高く気取って、うちらの事見下してさぁ！マジでなんなの」
「見下す程眼中に無い」
あ、やばい。
つい漏れてしまった言葉はオブラートに包む事を忘れてしまった。これで相手はもっと怒ってしまう。というかいっそ、此処で怒鳴り散らしてくれた方が良い気がする。私は溜め息を噛み殺した。
「自己中、マジウザい。アンタのせいで皆不幸になってんの！」
私が顔に何かを出した時点で、彼女の興奮はレベルを上げる。だから此処は高嶺の花でいるべきだと悟った。無表情で居る事は得意だ。
皆不幸になっている。正しくその通りだ。
「クラスの子と話さないのに、メグとか石島とか、そういうカースト上位の奴だけには媚び売って、何様なの？」
それからも、彼女のヘイトは続く。何人かが部室から出てくるのも確認したが、彼女達は揃って見て見ぬフリをした。賢明な判断だろう。
どうした物かと、暑い廊下の上で考える。一々刺さってくる言葉達は的を得ているから余計な感情まで入り込んでくる。
「そもそもAが死んじゃえば良かったのに」
これは三ヶ島京子の声でない。伏せていた睫毛を上げて階段の方に目をやる。誰も居ない。嘘、真っ黒な顔をした彼女が私を恨んでいる。
「おい、話聞けよっ！」
「何してるのっ！」
聞こえてきた、第三者の声。この声も三ヶ島京子の物でない。階段から其方に顔を向けるとよく知った人物達が青い顔をして参入してきた。
そういえば、悠馬が今日学級委員で文化祭の準備があるって言っていた。
「三ヶ島さん、この子が何かしたなら謝らせる。何があったのか教えて？」
声だけはしっかりと体に入り込んでくるのに、上手く息が吸えない。自分はこんなにも弱い人間なんだと嫌いになる。
「……A、どうしたの？1回座ろうか」
体を支えられるまま、準備室の壁に背中を預けて座らされる。そのまま抱えた膝に頭を付けた。
「なんもない、平気」
同じく隣に座ったお尋ね者、悠馬の息遣いまで聞こえる。それが苦しくて、怖くて。
結局私だけがあの旧校舎に置いてきぼりにされているのだ。
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詩季(プロフ) - のらさん» コメントありがとうございます。更新は、また停止すると思いますが、時間がある時に書いていこうと思います。ねじれの位置は平行線と対照的に、夢主の感情が後ろに向いている気がします。だから切なくなってしまうのかもしれませんね。 (2021年8月27日 20時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
のら(プロフ) - 更新が再開されて嬉しいです。時々ねじれの位置も読み直しますが、毎度なぜか切ない気持ちになるくらいには好きな作品です。応援してます^^* (2021年8月27日 0時) (レス) id: bbe0e38a06 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 詩季さん» そう言ってもらえて嬉しいです...！ありがとうございます！ (2021年8月26日 10時) (レス) id: 532289bdd0 (このIDを非表示/違反報告)
詩季(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» 此方こそ、続編にいかせてもらいありがとうございます。寧ろ評価して下さりありがとうございます。この作品は特に評価を気にしていないので、手間をかけてくださるだけで十分です。本当にありがとうございます。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 続編すごく嬉しいです！それとごめんなさい、評価10を押そうとしたら9押しちゃいました....本当に申し訳ありません！！！ (2021年8月25日 0時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2021年8月24日 19時
