平行線が115つ ページ21
翼さんも参加した舞台はとても面白かった。中世ヨーロッパが舞台で、其処で時計屋を営む男性が、裏稼業として殺し屋をしているといった物だ。
翼さんはその時計屋を営むメンバーでもあり、殺し屋でもあるらしい。以前の私と同じ職業だったから、少しだけ嬉しくなってしまった。
カーテンコールも終えて、観客達が去っていく中、私は1人ずっと椅子に座っていた。どうすれば良いのか分からないのもあったが、衝撃で立てなくなっていたのだ。
舞台という、生で感じる演劇にあまり触れた事の無い。殺せんせーが主役の桃太郎くらいである。
だから、肌で感じる音にも、景色にも、驚いてしまったのだ。
「どう、びっくりしたでしょ？」
「モルテだ…」
「あはは、随分楽しんだみたいだね？」
私は大きく頷いた。翼さんが手を出してくれるから、それに重ねてなんとか立ち上がる。まだ震えが止まらない。
「凄かったです。私、演劇ってあまり見ないから、衝撃的でした」
「ありがとう、このお客さんと一緒になる空気が好きなんだよね」
この歳になって翼さんの職業に初めて触れたのが、勿体無い気がした。私はもう1度頷いた。
「これから写真とかSNS用の動画撮って、メイク落として、シャワー浴びたら終わり。時間掛かるけど、もう遅いから待っててね」
「はい、大丈夫です。気にせずゆっくりしてください」
そう言うと彼は嬉しそうに笑った。それからパタリと手を離してその手で扉を開けてくれる。
「どうぞ？お嬢様」
「モルテだ…」
翼さんは嬉しそうに笑う。どうやら私の反応にハマったらしい。しかし彼は室内には入らず、また忙しそうに外に出てしまった。誰も居ない控え室で1人。先程の熱中した時間と比較したら、大分寂しい物である。
椅子に座って足をぷらつかせながら、スマホの電源を入れる。パスコードを入れると、幾つかメッセージが来ていた。
『今日、翼さんの舞台だろ？』
『どうだった？』
『舞台初めてだっけ？』
悠馬だ。舞台に行けると決まった日に連絡したのを律儀に覚えていたらしい。
『うん、はじめて』
『すっごい面白かった』
返信が来るかは分からない。だが他人に伝えることがで自分の興奮が段々と収まっていくのを感じた。
次翼さんが来る頃には、普通に戻れるだろう。
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詩季(プロフ) - のらさん» コメントありがとうございます。更新は、また停止すると思いますが、時間がある時に書いていこうと思います。ねじれの位置は平行線と対照的に、夢主の感情が後ろに向いている気がします。だから切なくなってしまうのかもしれませんね。 (2021年8月27日 20時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
のら(プロフ) - 更新が再開されて嬉しいです。時々ねじれの位置も読み直しますが、毎度なぜか切ない気持ちになるくらいには好きな作品です。応援してます^^* (2021年8月27日 0時) (レス) id: bbe0e38a06 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 詩季さん» そう言ってもらえて嬉しいです...！ありがとうございます！ (2021年8月26日 10時) (レス) id: 532289bdd0 (このIDを非表示/違反報告)
詩季(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» 此方こそ、続編にいかせてもらいありがとうございます。寧ろ評価して下さりありがとうございます。この作品は特に評価を気にしていないので、手間をかけてくださるだけで十分です。本当にありがとうございます。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 続編すごく嬉しいです！それとごめんなさい、評価10を押そうとしたら9押しちゃいました....本当に申し訳ありません！！！ (2021年8月25日 0時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2021年8月24日 19時
