平行線が112つ ページ18
やっとの思いで席に着くと、隣の男が早速話掛けてきた。
「大丈夫？」
「ご心配なく」
それだけ返して、担任の先生の話をぼーっと聞く。夏休みの注意事項だと分かって、ふと例の鈍器しおりを思い出した。うちにも律儀に届けに来たな、あの先生は。
「それでは良い夏休みを」
その言葉と同時に、生徒は開放感に包まれる。どうせ部活で毎日此処に来る人も居る筈なのに、不思議な物である。
号令と同時に皆は騒ぎ始める。私も鞄の中に荷物を入れ始めた。
「小野寺さん、これね」
「あ、ありがとうございます」
「それから三者面談、忘れないで」
「はい」
そんなのもあったな、と今更思い返す。普通は1学期の期末前にやるらしいが、丁度翼さんの公演が2つ重なっていた為、私だけ夏休みになってしまったのだ。
先生が私の元から去ったのを確認してから、成績表に目を落とした。
どの教科も10の数字、一先ず安心だ。
「Aちゃんどうだった？……って聞くまでも無いね」
「分かってるなら口に出さないで」
石島の軽口も丁寧に返して、私は鞄を持つ。メグにも挨拶して帰ろうかと思ったけれど、彼女は相変わらず女子に囲まれていた。人気者は訳が違う。
だからこっそりと教室を出る。廊下も、物凄い人だかりだ。
「お、今日のひ弱ガール！元気かい？」
「うるさ」
紫音は溌剌とした声を出して手を出してくる。仕方が無いからハイタッチに応じた。
「明日から夏休みだよー嬉しいね！」
「別に普通」
「うわうるさ」
何処が煩飼ったのか事細かに説明して欲しい。そんな紫音とも、じゃあまた夏休みにと言って別れた。毎日会っていた友人と会わなくなる寂しさを私は知っている。
「あ、居た」
それから2秒程人混みを彷徨っていたがお目当てはすぐに見つかった。廊下と階段を繋ぐ踊り場の端でちゃんと待ってくれている。
「お待たせ」
「ん、どうだった？」
ついさっきも会っていた男、悠馬だ。私は彼の問い掛けの意味を察して無言で成績表を見せた。
「お、よく頑張りました」
「学年1位です」
「おめでとう、俺は4位だった」
「誰に負けたの？」
「竹林が3位だったのは聞いた」
「2位誰だろ」
なんて会話をする。私も悠馬が凭れていた壁に背中を付けて、横に足を付けた。
「まだメグにバイバイ言えてないの」
「おっけ、俺も片岡と話したい」
不思議そうな顔をした悠馬に弁明をする。理解してくれた彼はいつもの笑顔を見せた。
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詩季(プロフ) - のらさん» コメントありがとうございます。更新は、また停止すると思いますが、時間がある時に書いていこうと思います。ねじれの位置は平行線と対照的に、夢主の感情が後ろに向いている気がします。だから切なくなってしまうのかもしれませんね。 (2021年8月27日 20時) (
レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
のら(プロフ) - 更新が再開されて嬉しいです。時々ねじれの位置も読み直しますが、毎度なぜか切ない気持ちになるくらいには好きな作品です。応援してます^^* (2021年8月27日 0時) (レス) id: bbe0e38a06 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 詩季さん» そう言ってもらえて嬉しいです...！ありがとうございます！ (2021年8月26日 10時) (レス) id: 532289bdd0 (このIDを非表示/違反報告)
詩季(プロフ) - 夜空 -Night Sky-さん» 此方こそ、続編にいかせてもらいありがとうございます。寧ろ評価して下さりありがとうございます。この作品は特に評価を気にしていないので、手間をかけてくださるだけで十分です。本当にありがとうございます。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: dd9b659291 (このIDを非表示/違反報告)
夜空 -Night Sky-(プロフ) - 続編すごく嬉しいです！それとごめんなさい、評価10を押そうとしたら9押しちゃいました....本当に申し訳ありません！！！ (2021年8月25日 0時) (レス) id: 2b2a41cc61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2021年8月24日 19時
