ねじれの位置が74つ ページ28
夏本番はもう目の前で、エアコンも扇風機も無いこの校舎には陽炎が揺らいでいた。
暑い。とにかく暑い。
クラスの皆が教壇に立つ其奴に暑いだの、プールまで連れて行けだの騒ぎ散らして抗議する。
そんな声に耐えかねたのか、怪物は教科書を置いてこう言った。
「側の裏山に小さな沢があったでしょうら其処に涼みに行きましょう」
そんな所に沢なんてあったっけ？
δ
「沢って言っても、足首まであるかないか位の深さだぜ」
急な岩道を降りる時、陽斗は手を伸ばしながらそう教えてくれた。私は咄嗟にその手を掴んで1つ下にある岩に降りる。
「水着の意味が無い」
そんなに小さな沢なら水着の意味が無い。しかし陽斗は目を輝かせて否定する。
「女子の水着は見てるだけで良いだろ！」
「其処の岩に頭打って根性叩き直して来れば？」
私は陽斗の手を離して距離も置いた。悠馬の隣に歩いて行くと不思議そうに此方を見て来る。
「おい待てって！」
陽斗のその声で何かを察したらしい。
「またやってんのか」
「いつも言うけど、陽斗が十割悪い」
この小競り合いは幼い時からずっとやっている。陽斗が何も言わなければ良いのに一々口を出すからいけないのだ。
「Aのとは言ってないだろ！」
「別に私のとは元から思ってない」
「お年頃なんだから良いだろ」
「口にしないで、頭の悪さが垣間所じゃなく丸見えだよ」
「仲良くしなさい」
悠馬を間に挟んでお互い言葉を突き付けていたが、痺れを切らした悠馬が少し大きな声でそう言った。この言葉に逆らえないのはいつになっても同じだ。
「さて皆さん、さっき先生は言いましたよね？
マッハ20でも出来ない事があると…その1つが君達をプールに連れて行く事、残念ながらそれには1日かかります」
怪物が振り向いてそう告げる。
「1日って大袈裟な、本校舎のプールなんて歩いて20分…」
苦笑いをして言葉を放った悠馬の奥から此処では聞けない様な音がする。
「おや、誰が本校舎に行くと？」
もしかして。
「何せ小さな沢を塞き止めたので…水が溜まるまで20時間！
バッチリ25mコースの幅も確保。
シーズンオフには水を抜けば元通り、水位を調節すれば魚も飼って観察できます」
皆の瞳が期待の色に変わっていく。
「制作に1日、移動に1分、あとは1秒あれば飛び込めますよ」
3年E組専用プールには飛び込んだ時の水飛沫が舞った。
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Rion - これからも陰ながら応援し続けさせて頂きます！！ (2020年3月14日 9時) (
レス) id: 4744658c47 (このIDを非表示/違反報告)
Rion_ - ねじれの位置が88つ。のお話のカルマ君のセリフの1部である「気絶する程度の触手は喰らうけど」というセリフが「気絶すふ」になっていました。 (2020年3月14日 9時) (レス) id: 4744658c47 (このIDを非表示/違反報告)
Rion - とても、楽しく読ませて頂いております！！読んでいて、1部誤字と思われる箇所を発見いたしましたのでお節介かもしれませんがお伝えさせていただきます。 (2020年3月14日 9時) (レス) id: 4744658c47 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩季 | 作者ホームページ：http://mobile.twitter.com/sa1son_i25
作成日時：2020年2月23日 2時
