脱力カバディ【灼カバ】 (ページ27)

今日:12 hit、昨日:12 hit、合計:37,526 hit

＊ページ27

*

そして翌日、はたしてあの二人は成長しているのだろうか。とはいっても一日経っただけでは現状は変わらないだろう。
ちなみに、昨日言っていた負けた方がマットの掃除と後片付けというのは本当だったようで、井浦が「雨宮も帰っていいよ」と言ってくれたのだ！今日も早く帰れるのかな？と期待を抱き、二対二の練習が始まった。
井浦のような観察眼を手に入れたい！と思いながら、守備の宵越と畦道の一挙一動を見逃すまいと目を大きく開いた。

「カバディ！！」

攻撃の水澄先輩は宵越に手を振るうが、宵越はそれを左へ移動し、難なく避けた。

「一！！」

すると、宵越は突然大きな声で数字を叫んだ。

「三！！」

彼はまた数字を言うと、畦道と体がぶつかってしまった。

「あっ…」

水澄先輩は衝突した二人に触れ、自陣へ帰って行った。
分かったぞ、これはサインだな！一瞬宵越大丈夫か？と思ったけれど。
分かる、分かるぞ。今のは宵越が間違えて違うサインを出したんだろう！

「悪りいヨイゴシ！！」

「よく聞いとけバカヤロウ！！」

本当は分かってけどね！
きっとあれだ。この数字は左へ避けるとかいうやつだろう。はっはっはっ！先輩は騙せても、マネージャーは騙せないぜよ！

◆

今日もまた、大きな差を開き、二年チームの勝利となった。しかし、昨日より点差は十五対五と、サインのお陰だろう、大分縮まっていた。

「お先ー」

水澄先輩はそう言って、宵越と畦道に手を振った。

「くそッ…」

「お疲れつした！！」

畦道は、水澄先輩に直角に腰を折った。
いやあ、なんでこんないい子なんだろう、そりゃ彼女もいるよ。ああ羨ましい、あんな綺麗な彼女とか。絶対いい子でしょ、わかるわかる。

「…あ、そうだ。い、井浦さん…」

「ん？ああ、今日もあいつらが掃除するから帰っていいよ」

その言葉に、遠慮がちに聞きに行ったAは、いつもの井浦を忘れるぐらいに喜んだ。

「やったー！ありがとうございます！」

お礼を言って、宵越と畦道に「掃除頑張ってね。ありがとう」と短い言葉をかけて、ギィィと重い扉を開いた。