脱力カバディ【灼カバ】 (ページ23)

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「…ただコイツに負けっぱなしってのが気に食わんだけだ。
勝つまでは少しくらい本気でやってやる」

その言葉に、水澄先輩はホント負けず嫌いだなと、頭の後ろで手を組んでそう言った。

◆

宵越の少し後ろを歩いていると、畦道のポケットから携帯の着信音が聞こえてきた。
クラスの女の子かららしく、Aは一瞬にして携帯を手に持った彼の後ろにさっと回り込み、その画面を覗いた。

「「宵越君、紹介して」だってよ。友達になりたいんだべか？」

まじか本当にこういうのあるのか。
いや、宵越はイケメンだし、こんなことがあってもおかしくはない…のか？

「ヒュー！こ〜のスケコマシ！！」

水澄先輩は、肘で強く宵越の背中をど突いた。彼が宵越に恋人の有無を聞くと、宵越は邪魔なだけだと言い捨てる。
というかスケコマシって何時の言葉だよ。

「雨宮は？カレシいんの？」

「じゃ邪魔なだけだ、そんなモン」

言い方も表情も完全に真似て答えてみると、井浦が堪えきれずにぶふぉと吹き出した。当たり前だが、前を歩く宵越は腹を立たせ、眉をぴくぴくさせている。

「いやぁみんな一人身か。寂しいねぇ」

「水澄もこの前別れたしな」

「つまんねー。じゃ彼女いんのは畦道だけかー」

一瞬理解が追いつかなかった。だが、直ぐに首をぐりんと畦道の方に回転させる。
待て待て待て、あの畦道に彼女だと？

「田舎のコだろ？遠距離でも彼女大切にな！！」

「う…うす！頑張ります！！」

いや、畦道に彼女がいたってなんら不思議なことではない。先を越されたとか悔しい訳でもない。でも少しだけ、ほんのちょっと彼女を拝見したい。
畦道に言い出そうか迷っていると、宵越が彼女の写真はあるのか？と吃りながら聞いてくれた。
顔を赤くして照れくさいと言う畦道に、宵越は殺すぞと圧力をかけた。

「な…何怒ってんだ？」

「怒ってない。いいからみせろ」

畦道は頬を緩ませながら、こちらに画面を向ける。ちらりと見てみると、そこに映っていた女は、想像と違う綺麗な女性だった。

「死イィーーね"ァァーッ！！！」

宵越は右手を振りかぶり咆哮した。

「止めんなーーッ！！全男子のためにコイツはここで殺す！！」

「なんだその使命感！！」

宵越は二人に押さえながら、畦道を殴ろうと暴れている。対して井浦は、くくくと笑いながら、少し離れて宵越を撮影していた。なんだ通常運転か。

こうして、大波乱のカバディ部親睦買い物作戦は幕を閉じた。