脱力カバディ【灼カバ】 (ページ22)

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そして連れていかれたのは握力など、様々な測定器が置いてある場所だった。
いや…呼ばれたのは畦道だけど、さすがに一人は耐えられない。

「背筋力測定。高一の平均は140kg前後だと」

「引っ張んだな」

畦道は測定器の上に乗り、袖を捲った。すると、何部かは知らんが、チャラそうな二人組が近付いてくる。
二人はAに気付くと、ニヤニヤしながら頭のてっぺんから爪先まで舐めるように視線を這わせる。
うわあ。とてつもなく気持ち悪い！

「何？コレで勝負すんの！？弱い者イジメはよくねーぞー………って…」

畦道は持ち手を強く握り、それを勢いよく引っ張った。
数字はぐんと伸び、二百に到達する。

「にひゃッ…」

「く！？」

二人はその、驚異的な数字に驚きを露にした。

「…お前らもやるか？」

先程まで畦道を馬鹿にしていた彼らは、遠慮しとくと言い、慌ててその場を後にした。

「…なめんな」

お前だってつい前までカバディ馬鹿にしてただろ、と言いたい気持ちを抑え、横を走っていく二人に一瞥をくれた。

「じゃあ次ヨイゴシな！！」

「あ？もういいよ。スッキリしたし…」

「よくねーよ！！おめぇ勝負つったべ！！
だからおら全力でやったんだ！！おめぇがやんなきゃおら一人バカみてぇだべ！！」

畦道は宵越のことを指差してそう言った。

「……バカだろ…」

「バカじゃねーよ！！」

そんな二人の掛け合いを、壁に寄りかかりながら微笑んで見る彼女は、やはり後方彼氏面にしか見えなかった。

◆

「オイ、井浦」

宵越が彼の名前を呼ぶと、井浦はんー？と返事をした。

「バスケ部の奴ら、凄いかしこまって出てったんだが…」

「いやぁ別に？新入部員探しに協力してね、って言っただけだよ」

井浦はいつものように、けらけら笑ってそう言うが、脅したんじゃ？ということしか思い浮かばなかった。とは言っても、部員は七人必要だし、それに守備が少ないと攻撃練習もぬるくなってしまう。

「せめて、宵越が守備もできりゃなぁ」

水澄先輩は前を歩く宵越にそう言った。

「…手を繋がなくていいならやってもいいぞ」

「だよねー手を…」

彼は、はー…短くため息をついた。
待って、今宵越なんて言った？

「うっそ！！どうしたの！？」

「救急車呼ぶか？」

伊達先輩は至って真剣という顔付きでスマホを耳に当てる。

「どこも悪くねーよ！！」

彼は顔を前に戻すと、声のトーンを落ち着かせて、ただ…と呟いた。