脱力カバディ【灼カバ】 (ページ20)

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「外ヅラのよろしいこって」

「騙されてる人達に本当の井浦さんを見せてあげたいです」

二人して井浦を批判すると、彼は「悪いことじゃないだろ？」と返した。

「それにさ…能京(ウチ)って強豪の運動部多いから…
味方はたくさんつけなきゃね。部費も立場も危なくなっちゃう」

「…まぁ部員も少ないし…『カバディ」だしな」

宵越はそう言うと、前を歩く水澄先輩のバッグに視線をやった。

「心配すんなよ。宵越のぶんもつくるから！」

「わ…わりぃな見せびらかして…」

水澄先輩の言葉で彼の視線に気付いた畦道は、焦ったように手でバッグを隠した。

「別に欲しかねーよ！！」

彼が大きな声を上げると、畦道は胸元にバッグを掲げた。

「けどコレ、仲間って感じで良くねぇか？チームの証だべ！！」

宵越はそう話す畦道を一瞥すると、

「同じバッグやユニフォームでも、チームじゃない事だってある」

その言葉を皮切りに、宵越を中心とし、なにやらシリアスな雰囲気が漂ってきた。

「…とにかく俺は馴れ合いが嫌いなんだ。
うぜーよそういうの…カバディにも興味ないってのに…」

過去の、サッカーをやっていた頃の彼に、何があったのかはなんとなしに分かってきたが、先程まで明るかったはずの空気は一変し、張られた弦のような緊張感に包まれた。

「何言ってんだ、夜公園で練習してたクセに」

しかし、その空気は井浦によって一瞬で崩される。
その事実に驚いた四人は、思わずえっと、同時に声を零した。

「なぜ知って…くッ寄るな！！」

水澄先輩と伊達先輩は守備をするときのように彼に無言で近付き、畦道は「誘ってくれよぉ！！」と嬉しそうな声で、三人は宵越を包囲した。
対してAは、喜びとも安心とも言い難い、一言で表現するなら「なんだコイツ」と、微妙な感情を抱いた。

◆

到着したスポーツ用品店は、バスケやサッカーなどが大半を占めている中、隅っこの方に、僅かだがカバディのコーナーが存在している。

「…意外と売ってんだな…？」

「ウチの部もマットとか買ってるんだ。部費で買うからちゃんと靴選んでね」

井浦はそう言い、お札が入っているであろう茶色の封筒を揺らした。視線を上げると、壁にかかってある小さなテレビに試合の映像が映し出されていた。

そういえば、カバディシューズは格闘技と似ているらしい。形態がレスリングと似ており、底が薄く足首まで編み上げているのが主流になっている。