脱力カバディ【灼カバ】 (ページ18)

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「あッああ、問題ない…！一人で転ぶなんて久しぶりだから驚いただけだ…」

宵越はAに気付くと、取り繕うように、慌てて上体を起こした。

「しかし、脚でタッチしてくるとはな…」

「ちゃんと自陣に帰れたのかなぁ？見えなかったけど…」

「あ…あたあた当たり前だ！！俺はちゃんと…」

井浦に図星を突かれると、宵越はやはり嘘をつくのが下手なのか、あからさまに吃ってしまった。
すると畦道は、そんな宵越の傍に行き、

「入ってたべよ」

と言うと、畦道はしゃがみ、宵越と視線を合わせた。

「やっとな、少しずつ…入って来た感じだ」

ええと…やたら持って回した言い回しだが、入って来た感じとは、一体どういう意味なのだろうか。

「審判が言うならしゃーないね」

例によって、井浦は喉を鳴らすように笑った。

「おーし！次はおらが攻撃＿＿…」

「あ、畦道はもう守備の方混ざっていいよ」

両手を上げて意気込んだ畦道は、彼の一言に、へ…と気の抜けた声を出した。

「よ…四対一か？」

宵越がそう尋ねると、

「いや、俺部長に話があってさ。入院先に行くから今日は抜けるよ」

と井浦は答える。

「部長に話？」

彼がそう反芻すると、井浦はああ、と返事をした。

「＿＿＿全国へ行くための作戦会議」

その言葉に、畦道は生き生きとした表情をさせるが、他三人は無反応…というより、険しい顔を見せた。
おそらく全国を経験してきた者達だ。面構えが違う。

「…カバディの常識は知らんが…全国なんてそう甘いもんじゃないだろう…部員もロクにいないのに…」

「さすが元全国区はわかってらっしゃる」

井浦はそう返すと、ジャージのファスナーをじいぃと、上まで引っ張った。

「足元はしっかり固めなきゃならない。
なるべく早め…そうだな、明日の放課後！」

彼は一人で話を進めると、自分の靴を脱ぎ、それを両手で持った。

「まずはみんなで宵越のカバディ用シューズを買いに行こう。安全のためにもあって損はしないし…」

井浦はいつもの態度が嘘かのように、ニコッと輝く笑顔を浮かべ、自分の靴を宵越に向ける。

「親睦を深めるのにもいいでしょ？
名付けて『カバディ部親睦買い物作戦(ショッピングオペレーション)』だ。」

名付けて、と言っていいのかすら怪しいくらい、そのままな作戦名だ。
畦道と水澄先輩、伊達先輩は、たのしみだなーと会話を弾ませているが、宵越はあからさまに嫌そうな顔をしてみせた。