脱力カバディ【灼カバ】 (ページ16)

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03話：陽動ページ16

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放課後、能京高校旧体育館。

カバディ部の練習は、『サーキットトレーニング』を主に行う。
ぶら下がりによりキャッチ力を高める無酸素運動から、
発声しながらのランニングと梯子(ラダー)ダッシュで肺を絞り上げる事を繰り返す。

「…宵越の奴、いつもと雰囲気違うな…」

「昨日畦道に遅れとったのがキいてんじゃん？
サッカーじゃ敵ナシだったみたいだし」

彼は触り心地がいいのか、畦道の頭を撫でながら、伊達先輩に共感をする。

「必死なのはいい事だけど、やりづらいな…」

それもそのはず、宵越はキャットウォークにぶら下がりながら、走る三人をずっと凝視しているのだから。
思わずクスリと笑ってしまうと、畦道が柵から手を離した宵越の傍に近付き、

「悩んでるみてぇだな、ヨイゴシ！！」

と声をかけた。

「みずくせぇな！！なんでも相談するべよぉ！！
おら一応、カバディのセンパイだかんな！！！」

畦道は満面の笑みでそう言うと、宵越の肩に手を置いた。

「…バカに聞く事などない！！」

「あーッ！！ごめんて！調子乗った！」

畦道はいきなり走り出した宵越を、ごめんと言って、慌てて引き止めた。

「バカとか言わねぇでさ、もっとこう…カバディの話とか…」

それでも宵越は、「バカはバカだ」と言って突き放してしまった。
はぁあ、とAは心の中で、大きく溜息をつく。

「しかし、バカにも学ぶ事はあった。今日は負けん」

宵越が口にしたのは、そんな意外な一言だった。
Aは畦道と同様に、豆鉄砲をくらった鳩のごとき反応をしてしまう。と、

「なんか必勝法思いついたんけ！？」

畦道はランニングを始めた宵越に、子供のように教えて教えて！と言い、後を追った。

「フン…バカにはマネできん」

「バッ…ぐっ、やってみねぇと、わかんねぇべ！？」

そんな二人の光景に、うんうんと頷き、Aは柔らかに微笑んだが、傍から見れば、それは後方彼氏面にしか見えなかった。

◆

「おーし！！試合するぞー！！攻守分かれてー！」

と、井浦が皆に声をかけ、宵越が最初に攻撃をすることになった。
三人は、まだ疲れが抜けておらず、水澄先輩はきちーっと声を零し、手首で汗を拭う。

「いい乳酸の溜まり具合」

「気ぃ抜くなよ？
何やら今日の宵越は…秘策があるらしいからなぁ…」

井浦がそう言って、宵越に指を向けると、彼はあぁ…と返事をした。

「＿＿＿キメてやるよ。『ハット・トリック』！！」