脱力カバディ【灼カバ】 (ページ13)

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宵越は畦道に腕を伸ばすと、畦道は宵越の胴体を掴もうと地面を蹴る。しかし、宵越はそれを狙い、後ろに引き下がって畦道の手の甲に軽く触れた。

して、宵越と自陣の距離はあと僅か。
カバディと声を出し、自陣に向かって手を伸ばすと、不意に、足がぐっと引っ張られた。

「背が高ぇって事は…掴める部分も長げって事だべ！！」

畦道は宵越の足を掴み、どこか挑むように笑った。

「…おらさ、少し悪い事したかなと思ってたんだ。ムリヤリ連れて来たけ、練習中も不機嫌してたし、
…でもよかった。
ヨイゴシ、試合の途中から……いいカオしてたべよ」

宵越は崩れるようにして体を倒し、自陣に手を伸ばす。
あと数センチで手は届いてしまうだろう。
彼の指からなる影が、白線の上に乗った。

「ヨイゴシ。これからは仲間だ」

彼は宵越の足を掴む手に力を込める。勢いよく腕を引くと、足を中心に、宵越の体が持ち上がった。
畦道は彼の足をさらに上げ、後ろへ流れるように、より強い力で腕を引く。

「ヨロシクぅ！！！！」

その瞬間、宵越は衣服とマットが擦れる音を出し、彼は地面へ叩きつけられた。

「試合終了ー！！二－一で畦道の勝ちー！！」

畦道はガッツポーズをし、身体全体で喜びを表した。すると、地面に横たわる宵越の元へ歩いていく。
何をするのかと思えば、彼は大きく息を吸った。

「一年一組！！畦道相馬！！
カバディ歴一ヶ月！！好きなものはカバディ！！」

宵越は、いきなり始まった自己紹介に目を見開く。
すると、後ろにいた先輩も宵越の元へ近付いた。

「二年！水澄京平！！
カバディ歴一年と一ヶ月！！好きなものはカックイイもの！！」

「同じく二年！！伊達真司。
カバディ歴六ヶ月！！好きなものは筋肉！！」

宵越は自分の入部が決まったことに、焦るように息を荒くした。

「や…やめろ…自己紹介をするな…」

そんな彼の前に、井浦(元凶)が立つ。

「クク…3年井浦慶。カバディ歴六年…好きなものはネット。
嫌いなものは…約束を守らない人間だ。」

井浦の自己紹介が終わると、四人の視線はAに向けられていた。
え？と声を漏らすと、井浦はじとっとした目付きで、早くやれと伝えてきた。

「い、一年……マネージャーの雨宮A。
好きな物は甘いもの。よ、よろしく…」

そう言うと、井浦は入部届けの紙とシャープペンシルを持ち、宵越の前に屈んで顔の前に差し出した。

「ようこそ、カバディ部へ。」