脱力カバディ【灼カバ】 (ページ11)

今日:4 hit、昨日:4 hit、合計:37,560 hit

＊ページ11

*

「ハッ、大した事ないなカバディとやらも…全然俺に触れられんじゃないか」

畦道は息を切らし、攻撃を幾度も避ける宵越の前で膝に手をついてぜーぜーと肩で大きく息をした。
彼はまだまだ！と言うが、時計の針は既に八時を迎えている。

「集合ー！練習しめんぞー」

井浦は高く手を上げて、大きな声で二人に呼びかけた。
その言葉に、宵越は息を整えながら、井浦の方に向かって歩いていく。
彼はまたしてもパソコンも取り出し、見せつけるようにひらひらと揺らすと、宵越にそれを渡した。

すると、井浦は宵越から離れ、畦道の肩に手を回す。

「勝負ってのはどうかな？畦道とタイマンのカバディで、負けたら入部してもらうけど…
勝ったら会員数を増やす…もちろん入部もしなくていい」

なるほど、スポーツ漫画でよくある展開か。
それはそうとして、会員数を増やすとはどういうことだろう。まあ、あまり深掘りはしないでおくが…

「ただし、今度は正式なルールでやってもらう。
守備のキャッチは解禁。攻撃…鬼は敵陣で倒れたら一失点だ」

それに加え、宵越は指一本でも自陣に帰れば成功。ただし、畦道は全身でないといけない、というハンデもあるらしい。宵越は畦道に視線を向け、考える素振りを見せる。

「…面白い。その勝負のった」

宵越がそう告げると、井浦の顔に影が降り、悪い顔でにやっと口元を歪ませた。

◆

二人はコートの中に入り、位置に着いた。

「…それじゃ二点先取！！宵越先攻で開始ーー！！」

スコアボードに二人の名前を書いた紙を貼り、宵越の様子を窺うと、視線を畦道から微動だにせず、彼はひどく集中していた。

「カバディ…カバディ！！」

宵越はあれほど照れていたキャントも、一切躊躇うことなく連呼している。
あくまでもこれは憶測に過ぎないが、やはり宵越がここまで必死になっているのは、井浦が先程言っていたことに関係があるのか…

「しかしやるっすね。鬼ごっことか油断させといて…入部賭けたガチ勝負であの畦道とやらせるなんて…」

「クク…途中で気付くだろ」

井浦は愉快そうに喉を鳴らして笑うと、カバディは格闘技だと…と言った。
すると、それを遮るようにして、

「カバディィイ！！」

とキャントが叫ばれる。
宵越は畦道と距離を詰めると拳に力を入れ、腕を大きく振り、力任せに殴りかかった。
彼はよし！と言って自陣に帰って行く。
畦道は強く頬を打たれ、その場に倒れ込んでしまった。