脱力カバディ【灼カバ】 (ページ2)

今日:17 hit、昨日:12 hit、合計:37,531 hit

00話：入部ページ2

*

「……入部希望の雨宮Aです。よろしくお願いします」

淡々と挨拶を済ませて顔をあげ、目にかかった髪の毛を整える。そして、品定めをするかのように目の前の部員達を見渡した。

「え、マジのマネージャー？」

シン、と静まり返った旧体育館の中に、確認を取る茶髪の男の声だけが響いた。

「あぁ、マジのマネージャーだよ」

井浦はAの代わりに、喉を鳴らすように笑いながらその問いに答える。井浦を一瞥し、未だに驚いている彼にやっぱり驚くよね、と心の中で頷いた。

なにせ、このカバディ部、部員が入っただけで大喜びらしいのだ。The･マイナーなスポーツの部活にマネージャーが入るなんて思いもしなかっただろう。

「へぇ！よろしくな雨宮！！」

目の前の二人の中で、一番背の低い彼はにっこり笑って喜びを露わにした。

「んじゃ！自己紹介すんべ！」

唐突に自己紹介を始める彼に思わずえ、と声を漏らしてしまう。

「一年一組、畦道相馬！！カバディ歴一ヶ月！！好きなものはカバディ！！」

思わず息を呑み、ぱちりと瞬きをする。
好きなもの(カバディ)を全面に押し出した自己紹介に、どうも戸惑いを隠せない。

「お、じゃあ俺達も自己紹介するか！」

反射的にAはやめてくれと願った。
マイナーなスポーツの部活だ、みんな本気でやっていないだろうと思っていたが、ただでさえ見た目が個性的な部員達に戸惑ってしまう。

「二年、水澄京平！カバディ歴一年と一ヶ月！好きなものはカックイイもの！！」

「同じく二年、伊達真司。カバディ歴六ヶ月、好きなものは筋肉！」

チャラ男とマッチョ。独特な二人と、これから毎日この人達と顔を合わせることになるのかと、早くも昨夜の行動を後悔する。
その張本人は壁に寄りかかり、腕を組んでいた。
仕方なく彼に助けを求めようとすると、井浦は壁から体を離す。

「三年、井浦慶。カバディ歴六年…好きなものはネット。嫌いなものは…約束を守らない人間だ」

ふざけるな、そう思いを込め、じろりと井浦を睨んでみるが、彼はお前もやれ、と言うような視線で返した。
くそ、器用な真似を。

「ええと、先程も言いましたが雨宮Aです、好きなものは…動物です」

ここで変に個性をつけると失敗するんだと、自らの経験を踏まえての自己紹介をする。
でもこれじゃあ胸糞悪いなと、息を吸った。

「嫌いな人は、脅してくる人です」

あ。まずい、間違えた。