La mer (ページ6)

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突如、今まで上機嫌に話していた男の声色が変わる。
｢えぇ、まぁ人魚なんて空想上の生き物にしか過ぎないと言うことは百も承知なのですが、軍の上層部よりこの一連の事件を解明させよ、という身も蓋もない様な任務を命じられまして｣
｢……｣
男は黙ったまま何も言わない。いくらなんでもさすがに無理がありすぎたか。
｢でもその様子だと、貴方も流石に人魚については何も知らなさそうですね。変なことを言ってしまい申し訳ございません。ご協力ありがとうございました。私はこれで｢待て｣｣

何も情報を得られず立ち去ろうとした次の瞬間、男に呼び止められた。そして、彼の口から驚くべき内容が語られる。

｢……人魚は、実在する。そして俺は、人魚達と旅をした事があるんだ｣
｢は……？｣
｢俺は昔海賊でな、家族と言える仲間たちと共にありとあらゆる海を渡った。とある秘宝を探すために。そしてその旅に、人魚も同行していた｣
｢海賊、だったんですか？しかしここ数十年は海賊は厳しく取り締まられてますし、最近活動している海賊の記録も何一つ残っていないのですが……しかも、人魚が同行していたって……そんな馬鹿な話がある訳……｣
｢……何も最近の話ではない、俺達が航海していたのは、800年前だ｣
｢は……！？｣

800年。それは正しく大航海時代と呼ぶにふさわしい時代。しかし人間の寿命から計算してみても、その話は無理がありすぎる。
だが目の前の男に嘘をついている様子は見受けられない。それに、何故かその話の全容を聞かなければいけない気がしてならない。

……この男は何者だ？
そしてこの既視感は何故だ。

｢……詳しく、聞かせてもらいましょうか｣
｢あぁ。その返事を待っていたさ。Marine(海軍の男)よ｣

そうして深澤は、かつて海賊だったという目の前の男の思い出話を聞くことになった。

これより語られるは、かつて昔世界を揺るがせた数奇な運命を辿る海賊達と、神の子と称される美しき種族、人魚との物語である。