9 ページ9
・
・
「...え、」
・
ダイニングに置いたままにしてたスマホを取り上げる。
《非通知》
可能性は限りなくゼロに近い。
私のスマホの番号なんて教えてないし。
だって、今あっちは夜中で。
非通知なんて怪しすぎる。
なのに......期待している自分がいる。
違ったら、怪しい人だったら即切りしようって決めて
応答のマークを、震える指でタップした。
・
・
・
・
・
「っ、もしもし」
『久しぶり』
「降谷さんっ」
『はは、元気そうだな』
「......降谷さん...っ」
『ん?』
「......う...」
・
泣くな、って電話口で笑う声。
その大好きな声が耳に響いたら
それだけでまた泣きそうになる。
・
『取り込み中だったか?』
「っ、いえ...みんな出てて夜まで一人なのでテレビ見てました」
『そうか』
「そっちは夜中ですよね?」
『そうだな』
「なんでこんな時間に」
『休憩中』
・
《ピンポン ピンポン》
突然、廊下に響いたインターホン。
宅配の予定は聞いていない。
・
「それって」
『出ないのか?』
「え?」
『インターホン鳴ってただろ?』
「いいんです、一人の時は出なくていいって言われてるから」
『出ろよ』
「え?」
・
《ピンポン ピンポン》
再び、廊下に鳴り響くインターホン。
ただ...聞こえるのは廊下からだけじゃなかった。
・
・
・
『ああ、すまない。休憩中というのは訂正する』
「.........まさか」
『正しくは休暇中、だな』
・
・
・
私の耳元で、規則的に鳴るその音は。
廊下に響くそれと全く同じ。
スマホを耳に当てたまま、転びそうになりながら走った。
ウソでしょ?
ウソだよね?
そのまま飛び出しそうな勢いでドアを開けた先。
左耳から、スマホ越しに。
右耳から、聞こえたのは。
・
・
・
「A」
・
直に触れる、大好きな声。
ドアノブを握り締めたまま、立ち尽くす私を見下ろして。
目の前で片眉を上げて笑うワイシャツ姿の彼。
暑いなって、左手にジャケットを抱えて。
・
「降、谷さ...」
「笑顔で迎えてくれるんじゃなかったのか?」
「なんで」
・
・
・
六千七百マイルの距離を越えて
会いたかった、って
彼のブルースターが細められた。
・
547人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました! (2020年3月29日 3時) (レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます!新作も引き続きよろしくお願いします! (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます!私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…!大好きです! (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ももこ | 作成日時:2018年12月27日 15時