5．高校三年生、ニューヨーク。 ページ5
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ニューヨークへ来て半年。
空港で彼に見送られてここへきた時は
寒いと感じたはずのこの場所も
毎日、必死に過ごしているうちに季節を越えて。
春にはあのB組のイケメン探偵が帰ってきたらしい。
電話で報告してくれた蘭ちゃんは本当に幸せそうだった。
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『Aさん、よく来てくれたわね』
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あの日、聞き慣れない英語で埋め尽くされた異国の地で
野村先生の日本語はすっと私の耳に届いた。
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『Hello！！』
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ホストファミリーのスミス夫妻と
私と同い年の、一人娘のエマ。
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『I'm so happy meet you！』
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ぎゅっとハグしてくれたエマに、自然と頬が緩んで
あの日から、この人たちが私の家族。
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ニューヨークでの生活は、戸惑うことばかりだった。
慣れない言葉、慣れない景色、慣れない学校生活。
ニューヨークでは当たり前のこと一つにしても
身体に馴染むまでは何日もかかったし
ホストファミリーもクラスメイトもみんな優しいけど
うまくコミュニケーションが取れなくて
歯痒い思いもいっぱいした。
昼間は新しいことばかりの日々が慌ただしく過ぎていくけど
夜、ベッドで入ると一人ぼっちなんじゃないかって。
日本にいた頃よりも豪華なベッドも
ベッドの下に置かれた外履きのスニーカーも
ドアの向こうから聞こえる英語も
孤独感を募らせるばかりだった。
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『俺は君が好きだよ、ずっとね』
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思い出すのは、彼の声。
腕の中で聞いたあの低い声は、今でも耳の奥に残っている。
私の腕を引いた手の力強さも
掠めるように触れた唇の温度も。
全部、覚えている。
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首元に手をやるのはもうすっかりクセになっていて
今日も、アクアマリンがきらきらと揺れる。
あの赤いアネモネは、押し花にして写真立てに入れた。
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「.........これで三通目」
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それから、引き出しに仕舞われているのは
六千七百マイルの距離をつなぐ
差出人不明のエアメール。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました！ (2020年3月29日 3時) (
レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます！新作も引き続きよろしくお願いします！ (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます！私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…！大好きです！ (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももこ
| 作成日時：2018年12月27日 15時
