35.20th Birthday ページ36
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「飲んでみるか?」
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それは、あの日...香りだけ知った大人の味。
淡い音を立てた金色に、上へ昇る透明の泡。
グラスを傾けた彼と同じようにすれば
軽やかな音が小さく響いた。
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「誕生日おめでとう」
「あ...ありがとうございますっ」
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大学から帰るなり、持ち前の器用さを発揮した彼は
瞬く間に私をドレスアップさせて
彼もまた上品なスーツを身に纏った。
なんとなく行き先は想像ついたけど
それでも想像以上、まさか東都の夜景が一望できるとは。
あのエミリオ・バレッティも宿泊したというホテルの上階。
母がマナーに厳しい人でよかったと心底思った。
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なんて緊張も、彼と話すうちに解けていって。
デザートの小さなケーキに感動する余裕もできた頃。
彼から、はい...と差し出されたのは小さな紙袋。
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「誕生日プレゼント」
「っ、ありがとうございます.........開けてもいい?」
「もちろん」
「.......わあ......綺麗」
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プレゼントまであるの...ってまた驚いて
紙袋から取り出した箱を開いてみれば
淡いグレーのベルトが印象的な
ピンクゴールドの時計が、閉店十分前を指している。
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「あ...もうこんな時間」
「うん。それとこれも」
「...まだあるんですか?」
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ふっと笑う気配に顔を上げたら
向かいで頬杖をついた彼が、肩眉を上げていて
さっき下げてもらったものと別の皿が目の前にあった。
同じサイズの布が被せられていて、その下は見えない。
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「えっと...デザートはもう食」
「上に部屋を取ってある」
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あまり立体的ではないそれを
反対側から右手を伸ばした彼が取り去ったら
ハッ...と、息が止まる。
そういえば、車なのにお酒を飲んでいた。
これを着るようにと渡された上品なこのワンピース。
ファスナーが背中についたデザインだけは
偶然だと思いたいけど。
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「っ、零さ...」
「怖いか?」
「.........ううん」
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緊張しないって言ったらウソになる。
だけど、怖くないのは本当。
私はもう...彼が与えてくれた愛を知ってる。
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「じゃあ、行こうか」
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皿の上から取り上げたカードキーを手に夜景を後にしたら
それからのことは、私だけが知っていればいい秘密だ。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました! (2020年3月29日 3時) (レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます!新作も引き続きよろしくお願いします! (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます!私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…!大好きです! (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2018年12月27日 15時