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姉が、いってらっしゃいって楽しそうに手を振る。
背中を押されるままに二人で歩き出す。
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「近くに僕の車を停めてある」
「なんで」
「ん？」
「は、母と...」
「大筋はさっき話した通りだ。あの話にウソはない」
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乗れって言う代わりに
あの日、ニューヨークでしたように
流れるような動きで助手席のドアを開けてくれた。
初めて見る白い車は、今度こそ彼の車。
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「さて」
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運転席に乗り込んでドアを閉めた彼は
君が聞きたいのはこの半年間の話だな、と眉を下げて
ネクタイを緩めてボタンを一つ外したら。
窓ガラスの外で、景色が静かに流れ出す。
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「君が卒業したらちゃんと話すつもりだったけど、僕は公安の人間なんだ」
「公安......って、」
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聞いたことがある気がする。
なんだっけ...友達がドラマにハマってたような。
確か、テロを防いだり...ヤバそうな組織に潜入したりして。
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「え、............えええええ！？」
「君には警察官だとだけ言っていたが...僕の立場上、本来は警察官であることも公にはしない」
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そう言われてみれば
警察官だと話してくれたのはニューヨークでだったし
日本にいた頃の言動もどこか頷ける節はあって
彼なりのギリギリの綱渡りだったのかなって思った。
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「それで潜入とかって...」
「ああ。五年ほど、ある組織に潜入していた」
「ご...！？」
「その組織と決着がついたのが、ニューヨークにいる君に二通目の手紙を送る少し前のことだ」
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後処理に時間がかかってしまって...なんて笑っているけど
五年前なんて、私はまだ中学生で。
それこそ気が遠くなりそうな年月に眩暈がしそうだ。
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「だが組織というのは、重要人物を抑えたところで誰かがその意志を引き継いでいる。
帰国後すぐに、その組織絡みでひと騒動あって......僕の最後の潜入が決まった」
「...最後？」
「頻繁に潜入なんてするような男に娘をお願いしますなんて言う親はいない。
何より君に危険が及ぶから...全てが片付いたら挨拶に行こうと思っていた」
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それがほんの二週間前のことだったそうだ。
脳裏に、大丈夫だと笑った彼を思い出した。
卒業したら迎えに行くって言葉は、ウソなんかじゃなかった。
彼は、本当に私のことを思い続けてくれていたのだ。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました！ (2020年3月29日 3時) (
レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます！新作も引き続きよろしくお願いします！ (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます！私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…！大好きです！ (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももこ
| 作成日時：2018年12月27日 15時
