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あの後、洗い上がった洋服を着て
ルームサービスを食べて
日付が変わる頃、ソファに並んで腰掛けた。
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「...スーツ、窮屈じゃありません?」
「バスローブだと緊張するだろ?」
「よくご存知で...」
「仕事柄、スーツのまま一晩を過ごすようなことは少なくないからな。
今はベルトもネクタイも外してるし、むしろ楽なくらいだ」
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二つ、ボタンを開けたワイシャツの裾を外に出したまま
飲みかけのグラスを持つ彼。
夜景を映す彼の瞳が...吸い込まれそうなほど輝いている。
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「ふ......、見すぎ」
「え、あ............お、おいしいですか?」
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あからさますぎる誤魔化しに
んー...って少しの思案顔を見せた降谷さんは
グラスをくいっと傾けて
中に残っていたシャンパンを一気に飲み干した。
そのまま私の項を引き寄せて、唇が重なる。
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「ん...!?」
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間髪入れずに滑り込んだ舌が
私の舌先を掻き混ぜるように絡んで
ふわりと、私の知らない香りが鼻を掠める。
角度を変えた唇が擦れ合う未知の感覚に
ぞくぞくって全身の力が抜けるのがわかったら
唇はすぐに離れて、降谷さんに預けかけた身体を起こす。
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「どうだ、香りくらいは楽しめたんじゃないか?」
「そ、んなの...わかるわけないでしょっ」
「それは残念。今のが最後の一杯だ」
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いつの間に切り替わったんだろう。
さっきまと違う...甘い空気に包まれた彼。
抗う術を知らない私は、いとも簡単に飲み込まれて
アルコールが回ったのかと思うくらい全身が熱い。
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「...もう一回?」
「えっ...だって今のが最後じゃ、」
「キス」
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今さっき知ったばかりの、大人の味を思い出す。
項に添えられたたままの手が
はい、おしまいって離れそうになる前に...答えは出た。
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「...嫌じゃ、なかった」
「.........じゃあやっぱり、もう一回くらいしておくか」
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私を見つめるブルースターが
ふっと唇に視線を落としたら
どちらからともなく重なったそれ。
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そう...このまま消えてしまえばいい。
六千七百マイルの距離も、離れ離れの時間も。
決められた未来すら...こうして混ざり合って。
いつの間にか、全部溶けてしまえばいいんだ。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました! (2020年3月29日 3時) (レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます!新作も引き続きよろしくお願いします! (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます!私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…!大好きです! (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2018年12月27日 15時