11.高校三年生、逢瀬。 ページ11
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家の前に停まっているそれを見て驚く。
だって、おしゃれなスポーツカーだったから。
車に詳しくない私でも、高そうな車だというのがわかる。
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「これは...」
「ジャガーEタイプ。知り合いに借りたんだ」
「はあ」
「各国を転々としている人なんだが、今回のニューヨークの話を耳にしたらしい。
好きな子を乗せるならちょっとくらいカッコつけなさいと言われてしまって」
「す、好きな子」
「うん?」
「いえっ」
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さらりと、どきどきするようなことを言うのがずるい。
男の人らしい雑さが彼の素顔なのかなって思ってたら
助手席のドアを開けてくれるその動きは流れるようで。
外国の車を運転する仕草が、横顔が素敵で
よく通る声が耳に、心臓に響いて心地いい。
気がつけば三十分くらい走っただろうか。
車はジャージーシティのパーキングに停められて
辿り着いたそこは、リバティー州立公園だった。
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「はい」
「え?」
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遊歩道の上、遠くに見えるエリス島を背にした彼に
突然...右手を差し出されて戸惑っていたら
そのまま私の左手を掬い取られた。
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「せっかくのデートなんだ」
「デ、!」
「うん?」
「いえっ」
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ずるい降谷さんにわたわたしていたら...クスクス笑う声。
そこでやっとからかわれていたことに気づいて
悔しくて、繋いだ手をぎゅって握ってやったら
今度は仕返しとばかりに彼の指が私の指に絡められた。
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「こっちの方が恋人っぽいな」
「ひぇ」
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ココアを淹れてる時、たくさん見ていたのに。
すらりと長い指が綺麗だなって思っていたはずの彼の手は
意外と骨ばっていて、ゴツゴツしていて。
やっぱり男の人なんだって、どきどきが加速する。
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「それ、付けてくれてるんだな」
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降谷さんの視線の先は...首元のアクアマリン。
その眼差しはどこまでも優しくて
夏だというのに、繋がれた手の温度なんて気にならなくて
どきどきが、今度はきゅんって音を変えた。
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「......降谷さんにもらったものは全部、大切に持ってます」
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遠くで、子ども達が遊ぶ声が聞こえる。
ハドソン川を挟んだ向こうには、マンハッタンが見える。
今度は夜景を見に来たいと
その時、隣にいるのがこの人であってほしいと本気で思った。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました! (2020年3月29日 3時) (レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます!新作も引き続きよろしくお願いします! (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます!私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…!大好きです! (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2018年12月27日 15時