1.高校二年生、空港。 ページ1
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『本日は、羽田空港国際線をご利用いただきありがとうございます。
本日チェックインカウンターは大変混雑しております。
ご出国のお客様は、余裕を持って搭乗手続きをお済ませください』
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雑踏の中、出発ロビーに流れるアナウンス。
姉が頭上の搭乗ボードを見上げた。
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「......じゃあ、行くね」
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蘭ちゃんや園子ちゃん、真純ちゃん達からの
《いってらっしゃい!》《待ってるからな!》
なんて温かいメッセージに返事をしながら
もう少しだけ、ってここに留まる理由を探したけれど
それもタイムリミットのようで。
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「野村先生が空港に迎えに来てくれてるからね」
「うん」
「A。楽しんだもん勝ちよ」
「ふふ、ありがと」
「......身体には気をつけなさい」
「...お父さん.........うん、ありがとう」
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いってきますって微笑んで
一人、チェックインカウンターへ歩き出す。
初めて一人で税関を抜けて
出発ロビーよりも静かな搭乗ゲート前のイスに腰を下ろす。
首元のアクアマリンを揺らして
手元には...赤いアネモネが、一輪。
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迎えに行くと私の手を取った彼を思い出してから
これでよかったかもって納得した。
顔を見たら、私はまた泣いてしまうから。
会ったら、私はその手を取ってしまいそうになるから。
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あの搭乗ゲートを越えたら
私はそこでやりたいことをやって
自分に出来ることを精一杯やる。
自分の大事にしているものと、自分の未来のために。
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「っ、うん。大丈夫」
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言い聞かせるようにイスから立ち上がって
ガラス窓の向こうで離陸を待つ飛行機に目を向けたら
見上げた空は薄いグレー。
だけどあの雲を突き抜けた先はきっと青空。
きらきらの太陽と、真っ青な空。
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《Aちゃん》
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彼の優しい声と表情を思い出したら
どうしても涙が込み上げる。
すぐそばにいるみたいに聞こえる声に
胸が締め付けられて。
じわりと熱くなる瞼を、ぎゅって閉じた。
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「Aちゃん」
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あれ......って思った。
頭の中で響く声じゃない。
後ろから聞こえた声に振返ったら。
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「その顔は......覚悟を決めた顔だな」
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私の名前を呼んだその人は
グレーのスーツに身を包んだ
私の大好きな人。
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名無し98724号(プロフ) - 本当にキュンときました…素敵な小説すぎて一気読みしました。他のお話もですが、書き方がとってもお上手で尊敬しております!少しお聞きしたいのですが、BTという小説を読まれたことはございますか…?(急に失礼ですよね、すみません)素敵なお話ありがとうございました! (2020年3月29日 3時) (レス) id: f858c9eb21 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - さちさん» さちさん、ありがとうございます!新作も引き続きよろしくお願いします! (2019年1月31日 11時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
さち - 初めから最後まで一気に読んでしまいました。素敵でした。新作も楽しみです。よろしくお願いします。 (2019年1月31日 9時) (レス) id: ae1bab64f5 (このIDを非表示/違反報告)
ももこ(プロフ) - 深月さん» 深月さん、ありがとうございます!私自身、無事に完結してホッとしています笑 (2019年1月28日 16時) (レス) id: 12dd65b537 (このIDを非表示/違反報告)
深月(プロフ) - すごく素敵なお話でした…!大好きです! (2019年1月26日 13時) (レス) id: a93ea5789b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2018年12月27日 15時