34.Welcome back kiss! ページ35
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突然の来訪だった。
こちらの世界に戻って最初に降谷君に会った橋の上。
この人はそこに居合わせていて...風見、と。
確か、そう呼ばれていたような気がする。
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「突然すみません、警視庁の風見です」
「...いえ」
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降谷君が帰ってくるよりも先に
この人がここへやってくる理由。
思わず頭をよぎった一つの可能性に身震いする。
風見さんはそれを察したようだった。
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「ご安心を。降谷さんはご無事です」
「.........、よかった...」
「絶対安静という状態ではありますが」
「そう、ですか」
「来ていただけますか?」
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思ってもみなかった提案に息が止まる。
もう少し帰るのが遅くなる、という話だと思っていたから。
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「行って...いいの?」
「ええ、...というよりも、来ていただいた方が我々としても助かります。
あの人のためにも、あなたのためにも」
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風見さんは私を車に乗せて
病院まで案内してくれた。
後は病室のドアを開けるだけなのに、いやに緊張する。
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「......降谷君...?」
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そっとドアを開けて中を伺うと
窓側のベッドの上、包帯をぐるぐるにした彼が
幽霊でも見たような顔を私に向けていた。
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「は、なんで...」
「風見さんがここまで送ってくれたのよ」
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降谷君は喜怒哀楽、たっぷり百面相をした後で
諦めたように笑って
おいで、と私を手招きした。
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「...もうじき散るところだったのよ.........桜...」
「そうか。散る前に会えてよかった」
「そのケガが治るのを待ってたら散ってたわ」
「風見のヤツ......今回ばかりは、感謝しないとかな」
「ええ、お説教は止めてあげて」
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「会いたかった」
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「...私も」
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まだ十分に身体を動かせない彼は
抱きしめる代わりに、私の左手に口付けを落とした。
そのまま、彼の動きが止まる。
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「...どうかした?」
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彼はもう一度、私の手に唇を寄せた。
今度は吸い付くように。
.........左手の、薬指に。
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「結婚しよう」
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唇が離れたその場所は
薄っすらと赤く染まっていて
彼からの突然のプロポーズと共に刻まれたそれは
指輪の代わりの
愛の証。
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どっきりとんとん(プロフ) - 何年かぶりに拝見しました。こちらのサイトを狂ったように漁っていた日々を思い出して何とも言えない気持ちになり、号泣してしまいました。思春期だった私を支えてくれた素敵な作品をありがとうございます。きっとまた読み返すと思います。 (2月6日 9時) (レス) @page37 id: fe5f4d4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 感動しました!泣きました!無事に消えなくて良かったです (2023年1月4日 9時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
塩瀬Fe(プロフ) - 作品のご完結からかなり時間が空いてしまいましたが…こんなに素晴らしい作品に出逢えて本当に嬉しいです。読んでいて自然と涙が出てきました…表現の仕方が刺さりました。これからも頑張って下さい。応援しています…! (2022年6月13日 17時) (レス) @page38 id: 9093843c29 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 1話1話のお話の満足度が高すぎてあれ??まだこんだけしか読んでない?って毎回びっくりします笑笑 (2022年3月28日 21時) (レス) @page16 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - とても綺麗な作品でした!説明が下手ですが、不思議な、そして穏やかな気分になれました。本当に素晴らしい作品でした、書いてくださりありがとうございました。 (2021年11月23日 8時) (レス) @page38 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2018年8月10日 14時