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・
・
「...............ふ、」
「...締まらないな」
・
庇うように私を抱えて倒れていた彼は
思わず吹き出してしまった私を見て
困ったように笑った。
・
「立てるか？」
「ええ...ありがとう」
・
先に立ち上がった彼の手を取れば
右手についた砂粒が
彼との指の間でさらさらと落ちた。
・
・
・
「Aさん」
・
彼が呼んだのは、確かに私だった。
・
「真っ直ぐ俺だけを思い続けてくれていた君が誰かなんて関係なかった」
・
ぎゅ...と、彼の左手が
しっかりと、私の右手の指先を掴んだ。
・
「俺は君が、」
・
突然、彼がきらきら輝いた。
それは私達を照らす...無数の、星の華。
夜空に咲いた分だけの音が心臓を叩いた。
フィナーレを飾る金色の星は...私達の、始まりの景色。
・
「こんな風に邪魔されることって...本当にあるんだな」
「本当に、ね」
「...好きだよ」
「......よく聞こえないわ」
「好きだ」
「なぁに？」
「Aさんが、好き」
「えー？」
「...A」
・
返事の代わりに、彼の左手を握り返す。
彼はその手をぐっと引いて、私の耳元に唇を寄せた。
・
「愛してる」
・
胸が波打つのは花火のせいよ、と。
誤魔化すように、彼へ顔を向けて口付けた。
・
「やっぱり、よく聞こえないわ」
・
焦らなくていい。
待たせた分だけ、愛を囁こう。
待たされた分だけ、愛を受け止めよう。
もう...これが最後だと泣かなくていいのだから。
これからは、君のそばで笑っていられるのだから。
・
「この花火が終わったら、ちゃんと聞かせて？」
「......覚悟しておくんだな。俺の愛は重たいぞ」
「あら、じゃあ今日は泊まっていく？」
「この海の見える部屋にしよう。明日は休みなんだ」
・
彼は私を人魚姫にはしなかった。
泡になってしまう前に、抱きしめた。
サニー・シー・ブルーの瞳に溺れた私を。
・
最後の一輪が咲き誇ったら、潮風が頬を撫でた。
彼と一緒に夏を抱きしめて
今日はこのまま...海辺の部屋で朝を待とう。
・
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どっきりとんとん(プロフ) - 何年かぶりに拝見しました。こちらのサイトを狂ったように漁っていた日々を思い出して何とも言えない気持ちになり、号泣してしまいました。思春期だった私を支えてくれた素敵な作品をありがとうございます。きっとまた読み返すと思います。 (2月6日 9時) (
レス) @page37 id: fe5f4d4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 感動しました!泣きました!無事に消えなくて良かったです (2023年1月4日 9時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
塩瀬Fe(プロフ) - 作品のご完結からかなり時間が空いてしまいましたが…こんなに素晴らしい作品に出逢えて本当に嬉しいです。読んでいて自然と涙が出てきました…表現の仕方が刺さりました。これからも頑張って下さい。応援しています…！ (2022年6月13日 17時) (レス) @page38 id: 9093843c29 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 1話1話のお話の満足度が高すぎてあれ？？まだこんだけしか読んでない？って毎回びっくりします笑笑 (2022年3月28日 21時) (レス) @page16 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - とても綺麗な作品でした！説明が下手ですが、不思議な、そして穏やかな気分になれました。本当に素晴らしい作品でした、書いてくださりありがとうございました。 (2021年11月23日 8時) (レス) @page38 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ももこ
| 作成日時：2018年8月10日 14時
