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「初めてだな」



「何が?」



「君とこうして出掛けるのは」



「そうね」







途中、工事で数分だけ渋滞した程度の道中は



夏休みとはいえ、平日の昼だったせいか



今はどの車も淀みなく進んでいた。















「まるで恋人同士だわ」



「...直進でいいのか?」



「...二つ目の交差点を右」



「了解」







彼の運転する白い車は、穏やかに路上を走る。



そのギアチェンジはスムーズで正確だった。



加速は優しく、ブレーキは静か。



車が揺れることはなかった。















「まだ、どこへ向かっているのか言わないのか」



「そのうちわかるわ」



「僕の知っている場所...か」



「もうすぐインターチェンジよ」







高速道路に乗るとは思っていなかったらしい彼は



それでも車を揺らすことなく指示に従った。















「君はあまり喋らないな」



「ごめんなさい、気を遣わせちゃったかしら」



「僕が好きで話しかけているだけだから構わない。退屈じゃなければいいさ」



「君が喋ってくれるから退屈しないわ」



「まぁ、君となら沈黙も悪くないな」



「同感ね」







途中のサービスエリアで昼食を済ませて



誰に買うわけでもないお土産を見たりなんかした。















「ご当地マスコットなんてあるのね」



「へぇ...かわいいな」



「え?」



「え?」



「......かわいい?」



「...かわいいだろ?」







壁に吊るされた限定のマスコットを二つ購入した彼は



私に合鍵を差し出すよう催促すると



一つをそこに取り付けた。















「...ありがとう」



「僕のついで」



「平気なの?」



「探偵業務に支障があるかという意味だったら、この鍵は問題ない」















いくつかバリエーションのあるそれは



別々のデザインを選んだおかげで、



パッと見た感じはお揃いには見えない。



それでも、頭に浮かぶお揃いという言葉が



私の心をむず痒くさせた。















「結構うれしそうだな」



「だんだんかわいく思えてきて」



「さっきは不本意だったのか」



「あ...次のインター」



「ん?」







私に促されて看板を視界に入れた彼の顔が



わかりやすく強張った。



そのインターを降りるよう指示すれば



車はかたん、と小さく揺れて車線を変えた。




3→←1.Summer Memories



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設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:恋愛
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どっきりとんとん(プロフ) - 何年かぶりに拝見しました。こちらのサイトを狂ったように漁っていた日々を思い出して何とも言えない気持ちになり、号泣してしまいました。思春期だった私を支えてくれた素敵な作品をありがとうございます。きっとまた読み返すと思います。 (2月6日 9時) (レス) @page37 id: fe5f4d4ce0 (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 感動しました!泣きました!無事に消えなくて良かったです (2023年1月4日 9時) (レス) @page26 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
塩瀬Fe(プロフ) - 作品のご完結からかなり時間が空いてしまいましたが…こんなに素晴らしい作品に出逢えて本当に嬉しいです。読んでいて自然と涙が出てきました…表現の仕方が刺さりました。これからも頑張って下さい。応援しています…! (2022年6月13日 17時) (レス) @page38 id: 9093843c29 (このIDを非表示/違反報告)
sou(プロフ) - 1話1話のお話の満足度が高すぎてあれ??まだこんだけしか読んでない?って毎回びっくりします笑笑 (2022年3月28日 21時) (レス) @page16 id: 26a665cc7a (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても綺麗な作品でした!説明が下手ですが、不思議な、そして穏やかな気分になれました。本当に素晴らしい作品でした、書いてくださりありがとうございました。 (2021年11月23日 8時) (レス) @page38 id: b375adba0d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ももこ | 作成日時:2018年8月10日 14時

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