70.公安の刑事恋物語 =Last Episode= ページ35
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「俺が生きようと思うのも、強くあれるのも。お前がそばにいるからだ」
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指先が...頬が、それから送られる視線が熱い。
ここまでされてわからないほど子どもじゃないけど。
その頭脳も、判断力も、強さも何もかもが。
劣ると自覚があるからこそ、疑問を抱かずにはいられない。
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「...どうして私なんでしょう」
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そんな純粋な疑問に、目の前の男は笑う。
らしくもなく困ったような顔で。
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「人を好きになるのに理由があるのか?」
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その言葉に反論する術を持ち合わせてるはずもない。
叶うわけないって、とっくに諦めたはずだったのに。
蓋をした想いが...ことりと音を立てた気がした。
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「...だから、言葉が足らないんですよ」
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吸い込まれそうなスカイブルーを負けじと見返せば
む、と眉間に皺を寄せてから、その視線が彷徨う。
あれ...これはもしかして、もしかしなくても。
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「え...照れてます?」
「大体、お前があっさり言いすぎなんだよ!」
「はぁ!?なんですか急に濡れ衣ですか!?」
「あんな告白あるか!素直に喜び損ねただろ!」
「降谷さんって結構、私のこと好きですよね!!!」
「〜っ、ああもう、うるさいぞ!!」
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部屋に響く二人分の声が、一瞬でかき消える。
黙らせるように塞がされた唇に
好きの一言よりこっちの方が恥ずかしくないか、なんて思う。
だけど...こんなにわかりやすい愛情表現はない。
離れた唇を追いかけるように、今度は私が踵を引き上げた。
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「...私が降谷さんの帰る場所ですね」
「...実を言うと、昇進を受けてお前には寿退社でもしてもらおうと思ってたんだが」
「え」
「隣を歩んでもらうつもりだとお前に言った時...まだまだ走り足りないって顔をしてたからな」
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いつか、降谷さんの背中を押すように玄関から見送る日が
両手に抱えられる分しか守れなくなる日が来るかもしれない。
だけど...今はまだ、もう少し共に走っていきたい。
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「A。お前もちゃんと帰ってこい」
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返事を待たずに、スカイブルーの瞳が伏せられる。
何かと荒っぽい上司からの口付けが
こんなにも優しいなんて、確かに厄介で。
そして...それから、最高に愛おしい。
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もうすぐ、二度目の春がやって来る。
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未桜 - 本当大好きですこれドタイプです……。テーマ一本釣りされて参りました。ストーリーも自然だし、キャラクターの魅力がとても引き出されていました! トリップした事に現実味のある主人公へかなり感情移入してしまいました。本当に素敵な作品をありがとうございました! (2021年12月22日 0時) (レス) @page36 id: 22cb640d25 (このIDを非表示/違反報告)
キャラメル(プロフ) - 最っ高です!!!大好きな作品の1つになりました!これからも頑張ってくださいね(^^♪応援してます! (2020年6月8日 15時) (レス) id: b8ac5a9a04 (このIDを非表示/違反報告)
美咲(プロフ) - 最高… (2019年12月14日 17時) (レス) id: f6fdf86c66 (このIDを非表示/違反報告)
神と名乗る凡人 - 最高ですね!これで読むの2回目のなるんですが何回読んでも感動します。上から出申し訳ないんですが、書き方も本当にプロで出せるような文章ですごく引き込まれました。これからも頑張ってください!応援してます。ありがとうございました!! (2019年8月31日 2時) (レス) id: 5e8845cf1b (このIDを非表示/違反報告)
華蓮(プロフ) - 感動しました!!降谷零という人物が更に好きになりました!!話を読んでいて、表現の仕方?がすごく好きです、読んでいて面白かったし、キュンキュンしました!!これからも頑張って下さい!! (2019年4月30日 1時) (レス) id: 28b0b44997 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももこ | 作成日時:2019年3月8日 16時