捌話 ページ9
「Aくん、やっと笑ってくれたね。笑ってる方が何倍も、何百倍も素敵だよ」
『……え』
「ここに来てから、ずっと悲しそうな、辛そうな顔してた。頭撫でられるのって安心しない?抱き締める方が安心するんだろうけど、そこはまぁ仕方ないよね」
「私と同じぐらいの身長で撫でやすいし、それにね、Aくんの髪って、ふわふわしてて触り心地いいんだ」
自分の表情筋があまり動かないことは重々承知していた。でも、笑えた。あの時は笑うことも、許されなかった。
いたずらっ子の様に笑う彼女に少し泣きそうになる。
『……うん、安心、するね』
ここにいてもいいんだ。そう思えた。
「さ、行こっか。大丈夫。皆、素敵ないい人達だよ。」
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1番隊から回って行くらしく、1番隊は山本さんの所らしい。行く途中、隊長、副隊長の呼び方も教えて貰って失礼のないように、と念を押された。あと、部屋の中にまでヒナは着いてきてくれないらしい。緊張で死んでしまうかもしれない。−−既に死んではいるが−−
「失礼します!五番隊副隊長、雛森。・・・……」
あっという間に着いてしまい、ヒナがなにか難しいことを言っている。言い終わると目の襖が開いた。
ヒナに背中を押され中へ入る。本当に着いて来てくれないらしい。
「よく来たな。体調はどうじゃ」
『ヒナが、良くしてくれているので、大丈夫、、です』
「ふむ、もう仲が良くなったのじゃな。」
『えっ……あ!いや、えと、雛森さんです!』
「言い直さんでも大丈夫じゃよ。お主が元気そうでなにより。今日は各隊長等に挨拶をするんじゃったか?改めて、儂は第1番隊隊長、山本元柳斎重國じゃ」
「第1番隊副隊長、雀部長次郎と申します」
以後お見知りおきを、と続けた初めて見る男性に焦りながらも自分の名を告げ頭を下げる。顔を上げると何とも微笑ましそうな顔をした2人。
『あの…僕の顔に何か……?』
「いいや、なんも着いておらん。ただ、昨日よりも表情が柔らかくなったと思っての」
『そう、ですかね』
「うむ。他の隊長の所も回るのであればそろそろ出た方が良いかもしれぬな。奴らはちと癖が強いからのう。」
昨日の雰囲気や総隊長という肩書きから怖いイメージしかなかったが、今の顔は孫を見守るおじいちゃんのようだ。
癖が強いという言葉に不安を覚えたが2人分の和菓子を渡され部屋を出た。
やっぱり、おじいちゃんみたいだ
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nana民(プロフ) - 続きが気になりすぎる (2023年3月10日 20時) (レス) @page26 id: 52a3fcc53d (このIDを非表示/違反報告)
アレンシス(プロフ) - めっちゃ可愛いです!続きを恵んでくれませんか? (2022年3月31日 9時) (レス) id: 47ccef0445 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:雨乃色 | 作成日時:2020年5月11日 23時