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脅迫概念 ページ5

「…簡単です。

琴葉を無視した時。

…それが一番重い、私の罪です」



無言。

空気に押しつぶされそうな気がした。

やがて、空気が擦れる音がした。



「…!?っぐ、うぁ…!?」



見えない縄に首が締められた。

息が吸えない。苦しい。また、また?



「…なっ、にか…ま、がった…?」



何か間違った?また何か違うことをした?

また、消えて無くなる?

友達も、自分がやっと手に入れたものも。



「…いいえ。間違ってない。間違ってない」



サクヤ様は、何故か二度続けて言った。

そして、更に続けた。



「…でもね、貴方は“失敗”に対する脅迫概念がある。

いえ、ありすぎるの」



…それは、そうだ。

一度の失敗で責められて、全て消える。

裏切り小説だって、そうじゃないか。

今までの信用を五回ぐらいぶっ壊されてもみろ。

…心が壊れる。



「貴方のそれは防衛本能なのでしょう。

今回も、あの子を助けたくて、模範解答を言った。

正答だけど、間違っている」



正解は、と言った時。

ノイズがかかって、聞き取れなかった。

まるで、体が全て拒否しているような。



「…やっぱり、聞けないのね。

無理やりにでも聞かせるわ。

これを聞かないと、貴方は現実を見れない」



もう殆ど、意識は朦朧としている。

視界が霞みがかっている。


すると、急に首の縄が緩められ、酸素が一気に取り込められる。

咳き込んでいると、サクヤ様の透き通った声が聞こえた。



「…あの子は、_______________。

それに気づかなかった事よ。

ずっと、ね」



今度は、ハッキリ聞こえた。



「……うそ…だろ…」


「いいえ、嘘じゃない。嘘じゃないわ。

本当よ」



だったら、だったら、全部。



「…最初から、惨めなのは私だけか?

善意で、可哀想だと思ってやってたのか?

全部、全部全部全部…んだよ…」



だったら、最初から、会わなきゃよかった。

最初から拒否しときゃよかった。

なんで、此奴だけならいいと思ったんだよ。



「…これを聞いても、生き返らせたい?」


「…はい。もう、決めちゃったんで」


「そう言うと思ってたわ。

…目の前の扉に入って。すぐ、帰すわ」


「…ありがとうございました」


「あら、お礼は人の目を見ていうものよ?」



すみません、と言い、後ろを向いた。

私は目の前にいた人を見て、息を飲んだ。


美しくて、見るものすべてを虜にするような、

神秘を全て集めたような。


そんな人だった。

事実→←耳を劈く。


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作者名:リリムゥ | 作成日時:2018年5月13日 17時

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