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そして純潔は守られる sgi ページ9




「すがいー」
「お、どうしましたA様」

 パタパタと何かを手に持ってこちらに駆け寄るその女性(ひと)はもうすぐ成人になるけど子どもっぽさが残るおてんば。

「見て!」
「おっ!」
「受かったの!」

 手に持っていたのは彼女がここ最近ずっと時間を割いていた資格試験の合格通知だった。夜遅くまで勉強してたのを知ってるから今だってほら、目の下にうっすら隈がある。

「おめでとうございます、さっすがA様」
「えへ、須貝が勉強見てくれたおかげだよ。ありがとうね」
「A様の努力の賜物ですよ。俺なんてほんのちょーっとだけ」

 そうかなぁ、そう呟く彼女は表情筋を緩ませ目尻がとろんとした顔で合格通知の書類を見る。暖かいその笑顔に俺も癒される。

「ねえ須貝、ご褒美ほしい!」
「ごほうび?」
「うん、あのね、最近できたばかりのケーキ屋さんがすごく美味しいらしくてね。一緒に行ってくれない…?」

 恐る恐るこちらを伺う彼女に普通の人ならそんなに怯えなくてもいいのではと思うだろう。が、俺は真意を知っている。
 食べることの好きなこの人はあまり量が食べられない。そのため男の俺が一緒にいけば少しずつの量でいくつか種類が試すことができる、そういうことも込みの提案なのだ。

「もちろん、俺でよければ」
「ほんま!?やったあ」

 俺が今まで見たどんな宝石よりも輝いている、贔屓目なしにきっとその笑顔に魅了される人間はこの世に何人もいる。眩しすぎる。眩暈がしそう。

「みんなにも見せてくる!」
「はい、いってらっしゃい」

 またパタパタと去っていく。
 聞いた限りどうやら俺に1番最初に伝えてくれたんだな。はぁ、嬉しいのにな…

 俺の家は代々ここA家に仕えている。その歴史は長く俺のじいちゃんのじいちゃんのじいちゃん…行き過ぎかも知んないけど、まあそんくらい長い。


 AAはこの家の1人娘で彼女が5歳、俺が9歳くらいの時からほとんどの時間を過ごしてきた。俺が中学上がったくらいのとき、いつまでも後ろをついてこようとする彼女を少し鬱陶しく思ったこともあったけどかわいい妹が1人増えた、そんな認識、だった。

 世間知らずのお嬢様ではなく、女子校育ちだから危なっかしい部分もあるけど芯がちゃんとあって努力家。頑張ってるのはわかるけどテンションが上がると出てしまう方言やイントネーションも微笑ましい。俺の砕けた口調が許されるのは幼馴染の特権だ。

 

 

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作者名:あまさく | 作成日時:2023年11月8日 20時

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