お詫びに、 ページ2
じっと見つめていると、彼女はいきなりくるりと振り返り、そのまま植木鉢を店の中へと運んでいき、すぐに外へ出て花を中へ入れる、の繰り返しを素早く行っていた。
その機敏さに思わず「はぁー…」と感嘆の声を漏らすと、彼女はアクアマリンをこちらに向けて「暇なら、あんたも手伝ってくれない?」と言い放った。
…は?
ちょっと待て、俺きゃ
「客だぞって思うだろうけど、どうせ雨宿り目的でしょ?なら客じゃないし、それよりお花が水飲みすぎてよくないから早く入れるの手伝ってよ」
「いや、何で俺が」
「いいから」
有無を言わせないペースに、仕方なく俺も手伝って花を運ぶ。
ていうか、ハーフっぽい顔立ちだから日本語喋れないのかと思ったけど…ペラペラじゃねぇか。つか初対面の癖にマジで何なんだよこいつ!
怒りを込めて奴を睨みつけるが、そんなのはお構い無し。
さっきからずっと花ばっか見つめてて俺なんか気にしてないし。
っていうのもあって、睨み続ける。どうせ視線には気づかないからあの冷たいアクアマリンを見なくてすむし。
そんなこんなを続けて、数分後に外に出ていた花を全て中へと運び入れることができた。
結構思ったより重かったこともあって、若干の汗をかいてしまった。雨も降って湿気が高いから尚更だ。
「ありがと。あんたのおかげで助かったよ」
そう声をかけられて振り向くと、タオルと水をん、と差し出される。
ありがとう、ございます、と言うと奴もキャップを開けてガーッと水を喉に流し込む。
端麗な容姿と比べて意外とガサツなところが非常に残念だ。
「何回かあんだけどさ、大抵の人手伝ってくんないんだよね。お前生意気とかって言って、大雨でも怒って出ていく人いんだよ。
花だって生きてんのに見殺しにするんだよ、無情だよね」
耳が痛い話に、上手く相槌が打てず「あー…」なんて曖昧に返してしまう。
なんつーか、綺麗事っつーか、正直めんどくせぇタイプ。
「まあ、客にタメこいていきなり手伝えとか言ったら普通怒るわな」
「…だって死にかけなんだもん」
「何が?」
「花がよ」
「…俺は、あー…お前みたいに純粋じゃないから、そういうの分かんねぇわ」
「ふぅん、まあいいけど」
怒るかと思ったが意外と平常心で返したことに驚いていると、奴は立ち上がって、中に入れたバケツの花束から1本、花を抜いて渡してきた。
「お詫び」
「いや俺花あんま興味ないんだけど」
「いいから。
あんたがこの花生かせてみてよ」
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作者名:あまなつ。 | 作成日時:2018年9月3日 21時