林間学校 ページ16
｢林間学校?｣
コホ、と軽く咳を零しながら聞き返すと、前の奴は｢そうです、林間学校｣とオウム返しをしてきた。
｢蘭たん昨日風邪で休んでましたから、ご報告です｣
｢はぁ、そらどうも｣
｢ちなみに部屋割りは出席番号順だったんで。
俺と蘭たん同じ部屋ですよ｣
｢ふーん腐れ縁てやつかな｣
｢ちょっ…!?どういうことですかそれぇ!｣
あー煩い煩い、と思いつつ、内心は結構安心している。
休みの間に余り物の寄せ集めに突っ込まれて、2泊3日の間気まずい空気で過ごしたくなかったからな。
ジューっといつものピンクを飲んでいると、突然後ろから勢いよく誰かにタックルされた。
後ろに傾いていたイスが一瞬にしてガタリと元の状態に戻る。
｢のわっ!!っ…誰だよ危ねーな｣
｢蘭たん元気なったんやな!よかったで!｣
｢病み上がりの体にタックルは危ないですよ…ごめんな、蘭たん｣
慣れた声に振り返ると、俺の眼前にいる隣のクラスのすぎると、そのまた隣のはっちがいた。
｢おー…つか、ちけぇよすぎる｣
ベリっと剥がすようにすぎるを押しやると｢冷たいなー｣と言われる。
いきなりタックルしてきて目の前に顔があったら誰だってそうだわ。
｢蘭たん林間学校の話聞いた?｣
相も変わらず黄色い声で話してくる彼に｢まあね、休んでる間に｣と返す。
｢何でも今年の引率の先生達優しい人ばっからしくてさぁ!
料理とか結構付き合ってくれるらしいねんで!｣
へぇ、と素っ気なく返すと、また冷たいなー!なんて声量が増して返ってくる。
だって本当にどうでもいいもん。
｢まぁ、蘭たん結構居眠りしてるらしいしね、林間学校でも目つけられるかも｣
｢えっAが言いふらしてんの｣
聞き捨てならない情報に食い気味に聞くと｢言いふらしてるっていうか…隣の隣のクラスの小野は結構寝てんぞーって｣と苦笑しながらはっちが返す。
｢…名指しじゃねぇか最早｣
｢仕方ないですよ、毎度寝てちゃ｣
俺も寝たくて寝てるわけじゃないんだけど、と思いつつまたズッと啜る。
｢まぁ林間学校は授業じゃないし。
野外授業みたいなもんだけど流石に寝れないから大丈夫でしょ｣
よくわからないフォローをはっちから受けるが、だからそうじゃねぇとツッコミたくなる。
｢せやな!何だかんだでA先生も優しいしな!｣
｢…かもね｣
消え入るような声でポツリと相槌をうつ。
そうか、あいつも俺らの学年担任だから来るのか、と思いつつ5限目がコミュ英だったのも思い出した。
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