6話 ページ6
荘園へ帰る道の途中、クラークさんと無言で歩く。
気まずい事この上ないのだが、自分から話しかけられる訳もないし先にひとりで行くのも感じが悪い気がして、結局黙々と歩いている。
「Aさん、さっきは巻き込んでしまって申し訳ない。」
「あ、いえ、だ、大丈夫…です」
……気まずい……
おそらく私だけが気まずいまま荘園の建物に到着した。
「じゃあ、私はこっちに用があるから。お疲れ様。」
「あ、お疲れ様です……」
はぁ……やっと解放された……
そのまま真っ直ぐ部屋に帰った。
ゲームの事を軽く日記のノートに書いてググッと伸びをする。
疲れたから夜ご飯の時間まで寝ようかなぁ
動くのも面倒くさくて椅子に座ったまま目を閉じた。
ふと目が覚めると窓から見える空は暗くなっていた。
小さく雨音が聞こえる。
「今何時……」
暗闇の中、時計を見ると長針と短針共に真上へ登ろうとしていた。
私が今まで伏せて寝ていた机にはちょこんと今日の晩御飯とメモが置いてあった。
『温めて食べて。
ノートン』
……ノートン……できる男だ……
ちなみにノートンが私の部屋に入ってこれたのは私が起きれなかった時に起こしてもらうために合鍵を渡しているからだ。
固まった体を椅子からあげると色々な関節が鳴った。
「ふぁ……お腹空いた……」
欠伸をしながら自室のドアを開き、片手に蝋燭、片手に晩御飯を持って歩く。
片手に蝋燭を持っているとはいえ、廊下は真っ暗で先が見えない。
普段こんな夜中に出歩く事も少ないので目の前に急にピエロがロケットダッシュ使ってきたり、白黒無常とかが瞬間移動してきたら5mくらい吹っ飛ぶ自信がある。
要するに、かなり怖い。
若干震える足に鞭を打ち、大股で食堂まで歩く。
ガチガチ震えながらも、何とか食堂へ着く事が出来た。
レズニックさんと狂眼が作ったというボタンを押すと食べ物が温かくなって返ってくる機械、「れんじ」を初めて使ってみようと思っていたのだが、使い方が分からない。
ボタンを押すだけではないのかと思った人もいるだろう。しかし、ボタンが多すぎるのだ。どのボタンを押せば良いかさっぱり分からない。
「れんじ」の前で1人考え込んでいると、遠くから物音が聞こえてきた。しかも、コツコツと足音が近付いてくる。
「……え、」
もう他の人は明日に備えて寝ている時間帯のはず。
まさか、おばけ……？
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作者名：雨靄古鳥 | 作成日時：2024年3月4日 19時
