じっとりべとべと/青 ページ2
普段から静かなトレーナー室に、ぱらぱらと紙を捲る音が染みる。静かすぎて眠たくなってしまいそうで、睡魔に押しつぶされそうな瞼を必死に説得して開ける。カリカリとペンで出走登録するレースの目処を立てていると、そこに扉の開く音がいやに耳に届いた。
「Aトレ〜ナ〜？おる〜？」
「居るけど...ウツ、サボりは良くないよ」
「ゃん酷い！！今日雨やからお休みって言ったんはAやろ...」
そう言って項垂れながら私の横に椅子を持ってきて腰掛けたのは、私の担当しているウマ娘であるウツ。紺色の髪がじとりと湿っているのを見るに、どうやら今日は相当湿度が高いらしい。気にしていなかった外を見れば、三女神様が水瓶でもひっくり返したかのような大雨が降っていた。彼にほいと言葉を投げる。
「雨ひどいねぇ」
「何人かは重バ場の練習したいからって外出てたで。健気やな」
「ウツもそれぐらい積極的になってくれない？」
「...Aトレーナー次第やなぁ」
彼は雨が嫌いらしく、細く小さめの耳をぺしょりと下げて私を見つめていた。書類に目を戻せば、なぁ、と腕が引かれる。
「ウツ、私貴方の次のレース決めないとなんだけど。」
「...それより僕んこと見てや、紙ばっか見すぎやろ」
「ウツがもっと積極的にトレーニングしてレース出てくれたら、考えてもいいよ」
そう言ってみれば、彼はおずおずと手の力を緩め、目線を泳がし始めた。それはそうだろう、もうクラシック級なのだからここから本気を出してもらわなくては困る。ふわりとはにかんで言ってみると、どうやら効果は覿面だったようだ。
「っ、Aちゃんほんまさぁ...」
「『僕の扱い分かっとるな』、でしょ？」
「しまいには怒るで僕！」
ぷんぷんと頬を膨らませる彼も可愛らしく、その割に尻尾がゆらゆらと振れているのに本人は気づかない。ふふっと笑ってみれば、何がおかしいねんと言われてしまった。
「...今からトレーニング、行くから、終わったらちゃんとご褒美ちょうだいや。」
「重バ場苦手だもんね、ウツ。頑張ろっか」
「〜〜！！じっとりするの嫌やねんほんまに〜！」
びぇえと泣きながらもジャージに着替えて外に出ようとする彼に、また健気だなと笑みが溢れた。
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うん - 両方好きなので、とても嬉しかったです！！リクエストよろしければ、e／mさん書いてくれますか…！ (2022年10月27日 8時) (
レス) id: 23e75d003f (このIDを非表示/違反報告)
歩希/Ayumu(プロフ) - あさん» コメント、並びにリクエストありがとうございます。ぜひ書かせていただきますので、気長にお待ちください。 (2022年9月29日 2時) (レス) id: 883edcee1d (このIDを非表示/違反報告)
あ - とても面白かったです…！ リクエストが良いのか分かりませんがご迷惑でなければ ｼ/ﾝ/ｼﾞ/ﾝで書いて欲しいです…！ (2022年9月28日 23時) (レス) id: b70f974580 (このIDを非表示/違反報告)
菊(プロフ) - あああああああ…。有難うございます大好きです需要しか無い…。（拝んだ） (2022年9月26日 11時) (レス) id: 073ffef2d2 (このIDを非表示/違反報告)
まちゃ - ウワ好ｯき 作者さんありがとうございます！！！ (2022年9月24日 23時) (レス) id: 1869c0d867 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：歩希/Ayumu | 作成日時：2022年9月23日 22時
