ろじうら ページ3
警察が到着する前に、私は家を出た。
思えば、既に恐怖で頭がおかしかったのかもしれない。
犯罪者というレッテルを貼られる恐怖。
拳が降ってくるよりも怖かった。
裸足のまま、ふらりと入ったのは路地裏。足裏がじんじんと痛み、座り込む。
先程ちらっと見た大通り、通る人の中に何人も異形がいたけど、さも当たり前のように過ごしていたのは何故か。
壁に貼ってあるポスターに、やたらと見られるヒーローとの単語は何を表すのか。
そもそも、ここはなんという場所なのか。
色々と疑問が湧き出てきて止まらず、落ち着こうと息を吐く。
現状を見てみる。
服は替えていないし、手は拭いてない。つまり真っ赤なまま。手をついたところに、血が付着する。
手をあげて、腕につたう血を眺めていた。
この体は、ろくに外に出ていないのか、肌は白くて、血の赤で白が汚れていく様を見ていると、なんとも言えぬ感情が内から湧き出る。
途端、聞こえてきた足音。足は目の前で止まる。
見上げると、仮面を被った男がいた。カッターシャツに黒のベスト、ループタイに、頭にはシルクハット。ズボンも靴もきっちりしていて、その姿はマジシャンさながら。
「どうしたのかな？」
その容姿と声。見覚え、聞き覚えがある。
たぶん、ずっと好きだった人＿＿キャラクターの方が表現として適切だろうか。ということは、ここは大好きな作品の中なんだろうか。本当ならば、それは願ってもないこと。
「……家からにげてきました。お父さんもお母さんも、わたしをたたくんです」
「そりゃ大変だ。随分と血の量が多いね」
「お父さんもお母さんも血の気が多いから」
手についた血をちう、と吸う。するとその人は察したように「ほう」と呟くと、手袋をつけた手で私の頭を撫でた。
「けいさつには言わないんですか？」
「おじさんは悪い人だから」
「じゃあ同じですね」
そう口角を上げると、その人はくつくつと笑って頷いて、「ああ、同じだ」と私の隣に腰掛けた。
それから何時間経っただろうか。かなり長い間、その人と話をしていた気がする。Mr.コンプレス、と名乗った彼とは案外話が合った。時々、得意のマジックを見せてくれて、その度に笑顔がこぼれた。
その時間はとても居心地が良くて、日が落ちて肌寒くなる頃には、疲れも溜まっていたのか、すぐに眠ってしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 101人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カナ - トガちゃんの成り代わりは私得ですね。笑更新頑張ってください。 (2019年1月29日 23時) (
レス) id: 270e06f60b (このIDを非表示/違反報告)
ふらわぁ@無理ゲーはパス。 - ツインテトガちゃん可愛い (2019年1月14日 14時) (レス) id: e44d61dba0 (このIDを非表示/違反報告)
ののいろ系女子 - 成り代わり！しかもトガちゃん！もう大好きが勢揃いで嬉しいです！更新大変だと思いますが頑張って下さい！ (2018年12月29日 1時) (レス) id: 8fb3eabd58 (このIDを非表示/違反報告)
ハムぴょん - ああ面白いぃぃ！！！とがちゃん好きだから嬉しい！更新頑張ってください！！！！！ (2018年12月17日 21時) (レス) id: e2495abf65 (このIDを非表示/違反報告)
愛と正義 - めちゃ面白いです！！ (2018年11月26日 22時) (レス) id: 270e06f60b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
