【トガヒミコ】殺したいから【成り代わり】

高校 ページ19

「んあー……？」


気づいたら温かい布団に包まれて、朝日を浴びていた。

のっそりと体を起こして、辺りを見回す。
そこには見慣れた家具と、鏡に映るわたし(渡我被身子)。

瞬時に理解する。今まで見ていたのは記憶の断片か何かだろう。随分と昔のことを夢に見たなぁ、と欠伸を零す。


「被身子！ 起きた⁉」


突如開け放たれる扉と、元気な声。

昔の寧人も、今の寧人も、変わらない。声が低くなったことと、性格が捻りに捻られて一回転してまた捻られたくらいにひねくれてしまったこと以外は。


「起きた。……頼むからさ、ノックしてくれない？」


ベッドから降りつつ、今日から雄英生ということに浮かれ気味な……いや浮かれてる、この様子は浮かれている。浮かれている寧人をじとりと睨む。


「昔はノックなんてしなかったじゃないか」

「あれー？ おかしいなー、私はしてたんだけどなー？」


しっし、と部屋から追い払うように手を動かす。


「もう！ 先にリビング行ってるから」

「はいはい」


むすーっと頰を膨らませて部屋を出ていった寧人。
上記した通りにひねくれてしまった寧人だが、幾分か子どもっぽい気がする。原作ではもっと……あ。
そういえば、この世界に来たばかりのときは色々わからなかったけど、あれから数年過ごしてわかったこともある。

こちらに来る前の世界は、前世と仮定していたけれど、いよいよ本格的に前世であると割り切った。そして原作にある、主人公が最初に遭う事件の報道で、この漫画の主人公の一つ上の学年だということがわかった。

つまり私は雄英高校二年生。

入学して相澤先生のクラスになったときは、すっぱり除籍処分にされるもんかと思ったけど、私一人残して他全員が除籍にされた。
なぜ私が除籍にならなかったかは置いておいて……雄英高校二年生なんて言ったけれど、個性事故やら極度の貧血やらで入院に入院が重なって出席日数が不足。それが何を意味するか。


＿＿留年です。わぁい。


なので、年齢的には一つ上だけど、学年的には寧人と同学年となる。

あと学費の負担が一年分増える。これはもう父さん母さんごめん。


寧人や漫画の主人公くんと同学年な嬉しさと、学費的な家庭への負担での両親への申し訳なさがぶつかり合っている。

喜んでいいんだか悲しむべきなのか。


……さて、気分を切り替えて、寧人と一緒に学校に行こうじゃないか。

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