イジワルなアイツが家族になったけれど。【mfmf】

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「あの……」



　そう声をかけられて我に帰る。

　見惚れてしまっていた。



『こ、これ、落としましたか……？』



　次第に声が小さくなっていくあたり、本当に情けないと思う。

　だけど彼は微笑んだ。



「あー、スマホ出した時に落としたのかな。ありがとう、俺のだよ」



　なんかデジャヴ。

　そして彼はまじまじと私を見る。

　近いｯｯ！

　相川といい、この方といい、近いんだけど！

　私が異性慣れしてないだけ⁉︎



「同じ学校だね。後輩かな？」

『え？』



　見ると、確かに同じ高校の制服を着ている。

　違いは男子用か女子用か、それだけだ。



『あ、はい、一年です』

「よかった。タメ口で話してたから先輩だったら申し訳ないなって」

『いえ、ほら見てください！私、小さいですし！』

「背低い先輩とかいるよね。俺の友達とか身長165cm無い奴もいるし」



　ちょっとだけおかしそうに笑う先輩が歩き出し、私も慌ててそれに合わせる。



「俺、一ノ瀬彼方。二年。君は？」

『支倉Aです』



　あと少しで、支倉なんて名乗らなくなるけども。



「ハセクラってかっこいい苗字だね」

『一ノ瀬先輩の名前、かっこいいですね！』



　そう言ったのは同時だった。

　それがおかしくて、二人して笑った。



　一ノ瀬先輩……すごく良い人だなぁ。



「うーん」

『どうしました？』



　先輩が悩んだ素振りを見せる。

　そしてすぐに、違ってたらごめんね、と前振りをつけて口を開いた。



「Aは、真冬と仲が良いの？」



　と。

　真冬。

　真冬……？

　相川真冬……。

　相川⁉︎



『な、仲良くなんてないですよっ！』

「そう？今日の朝とか、昼とか。一緒にいたから、てっきり仲が良いのかと」



　誰もいないと思ってたけど、一ノ瀬先輩いたんだ。



『誤解ですよ、誤解！』

「そっか」

『だって、性格悪いですし。前髪切るとか、もっと笑うとか、話しやすい雰囲気じゃないですもんアイツ』



　そこまで言って、口を塞ぐ。

　もしかして先輩、相川と仲が良いんじゃ……。

　そうだとしたら、目の前で友人の悪口言うのってどうなの⁉︎

　下手したら校内処刑かも。

　相川と仲が良いってことは、トップ集団に入ってるってことでしょ。



「……ぷはっ」



　そこまで考えていると突然、先輩は笑った。



　やっぱり校内処刑……？

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