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「A、どうしよう……」
数分前にシャワーを浴びた私と交代して、たった今シャワーを浴びてきた相川が言う。
ところで、の話なんだけど髪から水滴が流れていく様がカッコいい彼が、風邪を引かないか心配である私。
いや、昨日も思ったけどコイツ白のシャツにグレーのハーフパンツだよ、超薄着じゃない。
夏に向かっている暖かな季節だからその格好なのだろうけれども。
『何、どうしたの』
おっと意識が他の方へ行ってしまった、たとえ相川が風邪を引こうとうつされなければどうでもいいのだ。
それよりも、今の相川は相当焦っているみたい。
上手く笑顔が作れていない……いや、そもそも表情は意外とコロコロ変わるのでわかりやすいほどに焦りの色が滲んでいる。
「……この大雨のせいで、父さんたち今日帰って来れないらしい」
『は?ちょっと待って、それヤバすぎる」
大きな雨粒が窓を叩いている気がする。
それはまるで、私を責めているみたいで。
雨音を打ち消すほどの雷鳴は恐怖でもあり、救いでもある。
「……落ちたね、今の」
『うん』
シャッターのついていない窓から鋭い光が差し、10秒ほどで、長く大きい音が鳴る。
天宮しょーた〈ねえ俺の地区停電したんだけどみんな大丈夫?〉
坂田だお〈やっぱ俺の家だけじゃないよね⁉︎あまちゅさっきの見た?〉
天宮しょーた〈光すぎて嫌でも見えた
今猫が俺の足元でビビってる〉
ナツメ〈可哀想だからわしが保護してあげる猫くれ〉
どうやらクラスメイト____恐らく、天宮君と坂田君____が住んでいる地区に落ちたらしい。
「……A、ご飯食べちゃおっか。カップ麺だけど」
『そうだね、こっちも停電したら大変だし』
お湯を沸かしてカップ麺に注ぐ。人類の最速飯だ。
『二分が美味いんだよ、知らないの?』
「愛にできることはまだ____」
『このシーンでその曲流れるとかカップ麺好きすぎて笑う』
「水でもカップ麺作れるんだよ、知らないの?」
『温かい方が美味しいんだよ、知らないの?』
テレビをつけて、二人並んで麺をすする。
大音量、けれど番組は大雨を取り上げるものばかり、仕方ない。
夕食をとっている間にも、停電してしまった町が出る。
『地球温暖化かな』
「さぁね。天才は黙っててよ」
正直な話、ここまでの雨は珍しいけど、強い雨なんていつでも降る。
だから困る。
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絵鞠(プロフ) - ぬいめさん» ありがとうございます。期待の真下にあるような作品かもしれませんが、頑張ります! (2022年12月28日 18時) (レス) id: b2d7297930 (このIDを非表示/違反報告)
ぬいめ - 素敵なお話ですね!続きが凄く気になります、これからも更新頑張って下さい! (2022年12月19日 20時) (レス) id: b9e070215e (このIDを非表示/違反報告)
夢猫 - いつまでも待ってます!無理なく頑張ってください! (2022年10月20日 20時) (レス) @page39 id: f1d57ac7c3 (このIDを非表示/違反報告)
絵鞠(プロフ) - 夢猫さん» ありがとうございます。とてもゆっくりな更新ではありますが、待っていてくださいね! (2022年10月16日 13時) (レス) id: b2d7297930 (このIDを非表示/違反報告)
夢猫 - 初見です。夢主ちゃんとまふくんのとても可愛い日常生活を毎回楽しく読ませてもらってます。これからも頑張ってください❣️ (2022年10月4日 16時) (レス) @page37 id: f1d57ac7c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絵鞠 | 作成日時:2022年3月18日 16時