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思いの外、中は涼しかった。
けれど、はしゃぎまくった後だったから、この涼しさが逆に心地よく感じられる。
『わぁぁ……!相川、見て。海月が、フヨフヨしてる!』
「そりゃ海月だもんな」
深い青色をした水槽の中で、赤色に光る海月がフヨフヨと浮いている。
浮く、というよりかは、泳ぐ、の方が正しいのかなぁ。
「海月、好きなの?」
『うんっ。海の生き物の中で、一番好き』
触れた水槽の冷たさを手のひらで感じながら、隣に立つ相川を見上げた。
「……そう」
確かにこっちを見ていたはずなのに、すぐにそっぽ向かれる。
人の顔くらい見なよ、もう……。
「海の生き物の中ってことは、海月が一番好きって訳じゃないんだ」
また、相川は私の方を見て問う。
どっか向いたりこっち見たり、忙しい奴だなぁと考えながらも相川を見ながら答える。
『わんちゃんと猫ちゃん!』
「答え方ちびっ子かよ」
そうかなぁ。
そうだよ。
そんなことないよ!
何を思ってちびっ子って言ったか分かる?
分かんない。
……。
無言になるのやめてもろて。
海月はそっちのけで、会話ばかりが輝いた。
……海月さん、ごめんなさい。
「もうそろそろ、映画も終わる頃かな」
『もう終わり?』
左腕についた腕時計を見る相川。
まだ遊んでいたいのになぁ。
「観覧車」
『えっ?あ、観覧車!乗ろう乗ろう』
「忘れてたでしょ」
『えへへ』
相川に手を引かれながら水族館を後にした。
観覧車っ、観覧車っ♪
周りを見ても、あまり人はいなかった。
「遊園地を貸し切ってる気分になるなぁ」
『ねっ。……早く行こう!』
「お前、足痛めてるんだからもう少しゆっくり歩けよ……」
二人の間に流れる沈黙が、らしくなくて、怖かった。
笑え、笑え!
今日は、今までで一番楽しい日だと、私は思うから。
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絵鞠(プロフ) - ぬいめさん» ありがとうございます。期待の真下にあるような作品かもしれませんが、頑張ります! (2022年12月28日 18時) (レス) id: b2d7297930 (このIDを非表示/違反報告)
ぬいめ - 素敵なお話ですね!続きが凄く気になります、これからも更新頑張って下さい! (2022年12月19日 20時) (レス) id: b9e070215e (このIDを非表示/違反報告)
夢猫 - いつまでも待ってます!無理なく頑張ってください! (2022年10月20日 20時) (レス) @page39 id: f1d57ac7c3 (このIDを非表示/違反報告)
絵鞠(プロフ) - 夢猫さん» ありがとうございます。とてもゆっくりな更新ではありますが、待っていてくださいね! (2022年10月16日 13時) (レス) id: b2d7297930 (このIDを非表示/違反報告)
夢猫 - 初見です。夢主ちゃんとまふくんのとても可愛い日常生活を毎回楽しく読ませてもらってます。これからも頑張ってください❣️ (2022年10月4日 16時) (レス) @page37 id: f1d57ac7c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:絵鞠 | 作成日時:2022年3月18日 16時