.07 ページ8
.your side
「……空いてるのかなぁ……」
まさか、こんなに遅くなるなんて。
朝一番に喫茶ポアロへ向かおうとしていたのに急用に次ぐ急用に駆られ、私がポアロへ着くときには日も沈んでいた。
彼が休みだったらどうしようという心配が頭をよぎるけれど、それはないだろう。この時間帯の個人喫茶店も一介の大学生には敷居が高い。少しの不安を気合で誤魔化し、ドアを開ける。
「……あっ」
「Aさん!」
ドアを開けたところには丁度彼がいた。意外にももう人はまばらで女子高校生もここからは見当たらない。もう時間も遅いので、夕飯を済ませてしまおうと思い席につく。もう一人同年代の女の子が働いているようだけれど、彼のほうが注文を聞きに来た。
「珈琲と、半熟ケーキ」
「それと、忘れていったイヤリングですか?」
よくお分かりで。
すると彼は少し待っていてください、と私に言い裏方へ消えていった。
この時間はスーツ姿の男性方ばかりだが、確かに女子高校生も多く出入りするのだろう。私が注文したケーキもだけれど、メニューを開くと明らかにその世代の少女向けのお料理も並んでいる。
順番にページを捲ると昨日の朝ご馳走になったハムサンドの写真も貼ってある。豪華な朝食だったけれど、喫茶店価格なら彼の時給分くらいはかかったのではないか少しと申し訳なくなる。次は他のメニューを頼むことにしよう。
「遅くなってごめんなさい」
「私の来店時間のほうが遅いので」
「確かに、僕は今日一日中あなたが来るのを待っていましたよ」
そう言いくるりと背を向ける。
目の前に置かれたのは珈琲とミルク、ケーキ、イヤリングであろう部分が不格好に膨らんだ封筒。気の利く格好いい店員さんが無地の白封筒を使うのかと少し面白く思いながら封筒を開けると、イヤリングの他に紙切れが入っていた。
31人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時