［安.室.透］アースクエイク (ページ31)

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更新サボってすみません……一応次回で完結です
.toru's side

「おまじない？」
「ええ、あなたがわたしのイヤリングを持って行った時、何だか心まで持っていかれた気がしたので」

そうやって目を伏せるAはやっぱり幼い娘の面影が残る大学生で、先程ジントニックの味がするキスをしてきたとは思えない。さておき腕時計を奪われた僕は、たしかに心がAに傾いていておまじないの恐ろしさを感じる。

「……そのおまじないは僕がイヤリングを返したあとも続いたでしょう？」

恥ずかしそうに頷く彼女に、なら僕の腕時計も返してくださいと笑う。素直に腕時計を返されて、それを手首につけた。

それからAからは僕の素性からは遠い質問をいくつかされて、他愛のない話に暮れた。バーは今日は閉店が早かったなと思い時計を見ると、日付を超えて長い針が１を指そうとしている。さすがに女性の家に深夜までお邪魔するわけには行くまい。適当にタクシーを捕まえるつもりでそろそろ帰りますねと玄関口へ向かった。

ドアの前で突っ掛けただけの靴をきちんと履き、今日の礼を言う。なにか言いたげにじっとしていたAは、スリッパのまま僕の方へ来てぎゅっと抱きついた。

「A？」
「……れいですか、名前」
「……さあ」
「ゼロじゃなくて、あなた、れいでしょう」

鋭いなあと思いながら甘く手をAへ持っていく。零の名を呼びながら好きだと吐き出すAに何か触発されて、顔をこちらへ上げさせた。

「……れい……！？」

バーでのお返しだと言わんばかりにキスをする。何だかAがとっても愛おしい。混乱してぐらぐら揺れる瞳を見つめてもう一度キスをした。

まるでアースクエイクのように、衝動的でくらくらするキスだった。