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.your side
「でも一度、彼が警察のお世話になっていて、引受人になったことがありました」
「……どういった案件で?」
「確か、どこかの神社だったか教会だったかで、殴りかかったとか……それで……確か……ええっと、……」
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目を覚ましたら知らない場所にいた。
整頓された部屋の向こうから、卵の焼ける匂いと珈琲の匂いがする。枕元に置かれた腕時計は7時を指していて、講義に間に合うかという不安も頭をかすめて焦るような気持ちになった。
腕時計はもちろん、ネックレスもイヤリングも全て外されているようだ。動いても大丈夫なのかドアを見つめたところで、そのドアがゆっくりと開いた。
「よかった、目覚めましたか」
「……あ、昨日のバーの……」
金髪の青年だ。もしかして、酔い潰れて泊めてもらったのだろうか。記憶がないけれど、何も失礼なことはしていないだろうか。それとも、身代金目当ての誘拐だろうか。
「……どうして、ここに」
「バーの閉まる時間まで粘ったけれど、相当眠たかったのか起きてくれなかったので僕の家に」
「ありがとうございます」
ご迷惑をおかけして申し訳ありません、と続ける。ぶつかってしまったお詫びだと思ってください、と彼は笑った。
「せっかくなら、朝食を食べて行ってください。僕、意外とお料理できるので」
「お言葉に甘えさせてもらいますね」
そういえば、青年の名前を私は知らなかった。それを聞いた青年は、安室透ですと再び微笑んだ。
「あなたの名前は?」
「Aです」
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作者名:ism | 作成日時:2018年8月11日 19時